世界の支援のあり方〜スマトラ島沖地震・津波、イラク、スーダン

最新の報道によると、スマトラ島沖地震津波による死者の数は約12万5000人に達するといいます。国連は15万人に迫る、またスウェーデンの外相は20万人ではないか?との可能性を示唆しています(ロイター@Yahoo!ニュース)。インドネシアの8万人、スリランカの3万人弱、そしてインドの1万人など現在確認されている数字だけでもこれだけあるのですから、まだまだきちんと情報を得られていないところもたくさんあるでしょう。また世界保健機関(WHO)が最大で500万人に伝染病の危険に晒されているという発表をしています。これは、被害により適切な医療などの保健サービスを受けられない人が出ていること、また未回収で放置されたままの遺体の腐敗、また不十分な安全な飲料水などが関わっているといいます(読売新聞)。

こうした状況に世界60ヵ国から230億円もの支援を表明しました(産経新聞@Yahoo!ニュース)。国連のアナン事務総長は国連加盟国及び国際機関が申し出た拠出額は1230億円に達したことを明らかにし、100万人が住居を失い、500万人が援助を必要としていることを指摘しました(共同通信@Yahoo!ニュース)。これはイラクへの支援金をも大きく上回るともいわれています(朝日新聞。先日もブログで紹介した日米豪印を中心とする救援の動きと、国連による救援の動きがクロスして進んでいる現在、国際政治の力学も大きく関係しながらも「お金」の面に関してはプラスに動いているようです。

これまで1週間ずっとインドネシアスマトラ島沖地震津波支援情報について流してきました。徐々に今回の被害の大きさというのが把握されてきています。日本人被災者の情報も2日夜頃から、個人旅行者を初めとして、主にピピ島や顔ラックに滞在していた百数十人の安否が確認されていない状況だということが判明しました(時事通信@Yahoo!ニュース)。なかなか情報が入りづらいのは事実でしょうが、こういう時のためにあるのが政府です。しっかりやって欲しいです。

昨日書いた国際社会の支援について、アメリカと国連(そして国連中心の支援を求める欧州諸国)との間の軋轢について書きましたが、毎日新聞の記事では、日米豪印の「中核グループ」が、イラク同様に復興の主導権を握ろうとしている疑念が生まれ始めているとありました。イラクでの失敗を挽回する好機とみなしたアメリカが、またアジアでの政治的・軍事的プレゼンスを維持するためにも支援の主導権を必要としているとの記事です。

インドネシアアチェスリランカの一部のような"反政府"勢力と呼ばれる地域で起こっている支援の不行き届きと同様に、人命をこうしたつまらない(ですよね?)いざこざの中に置いて蔑ろにして欲しくない。本当にそう思います。

今、国際社会の目はこの地震津波被害の方に向いていますが、一昨年3月以降、「戦争」状態となっているイラクでは年末年始にかけて、武装勢力のテロや攻撃が頻発しています。イラクの国家保安隊員ら30名以上が被害に遭い、亡くなっているとのこと(日経新聞)。今年の早い時期に選挙が行われる予定のイラクでは、「戦争」前の生活を取り戻すことができないまま、米英日占領軍(と呼んでも差し支えないでしょう)とイラクの傀儡政権との間でますます混沌としています。こうしてみると、改めて軍隊を送っている国々は何よりもまず、軍を引くことから考えなければならない状況のようです。
またスーダン西北部のダルフール地方での紛争も未だに解決の糸口が見えません。報道の多くは地震津波に裂かれているために、ほとんど情報が上がることはありませんが、「ジェノサイド」ともいわれるこの地方での出来事は、以前として十数万人の難民・避難民を生んでいます。もちろん、多くの方が殺されています。

イラクの事件が起きたときに、アフリカの国々は「イラクだけではなくアフリカにも」と声を上げましたが、現在もまたイラクダルフールの多くの人々が「インド洋震災だけではなく、イラクダルフールにも目を向けて」と口を揃えていっているように思います。個人的には1週間、そうした情報を流せていないので反省点は多々ありますが、やはりそこが難しいのも事実です。

そんななか、スーダン南部で20年以上続いてきた内戦に一筋の光明が見えました。先日のブログ(11/20)で紹介した、政府と抵抗勢力SPLAとの間の包括的和平協定が形となり、両者が停戦に合意し、内戦が終結に向かうことになりました(例えばこちらの毎日新聞記事ロイター@Yahoo!ニュースなどを参照してください)。こちらもイラク同様石油を巡る問題を中心に続いた内戦でしたが(例えばこのブログ内のブログ記事「中国、スーダン、石油」(9/19)や「マレーシア企業のスーダン進出」(10/6)などを参照してください)、これでひとつの「平和」の形を見ることができました。

これは国連決議によるものが大きいですが、いろいろとたくさんの問題を抱えるのは事実とはいえ、やはりある種の「帝国」による秩序安定化ではなく、国際協調のなかでのそれを求める姿を考えるべきなのかもしれません。そう考えると、イラクの秩序安定のため、またスマトラ島沖地震津波の被災者支援にあたって、どのような方法が「より適切か?」は分かるのかもしれません。