食料価格の高騰に伴う世界の動き

 貧困国が、食料価格の高騰により貧困の度合いを悪化させている。今月初め、食料価格の高騰が原因で中南米カリブ海のハイチで国連事務所なども襲撃されるという暴動が起こった。ハイチでは食料及び燃料の価格が55%も高騰しており、870万人の人口の内80%をしめる貧困層の54%が絶望的な状態にあるという(CNN.co.jp)。ハイチだけではなく、世界中でこうした生活苦に悩まされる人々が声をあげているという現状がある*1。またフィリピンでも、米の値上がりを受けて食糧事務所に殺到し、非常事態宣言の発令すら必要とされる状況にあるという(毎日新聞)。さらには、パキスタンでは食料が配給制、ロシアでも卵の価格が固定されたり、インドでは米の輸出を禁止する措置をとった(J-CASTニュース)。

貧困と飢饉

貧困と飢饉

 穀物は現在の地球上の人口の倍の人間を食べさせるだけの量を生産している。約20億トンとも言われる穀物生産量がある。しかし、食べることができない人たちがたくさんいるなか、先進国では家畜に飼料として用いられたり(例えば牛肉1キロを生産するために8キロの穀物が必要だと言われる)、日本の食料援助の量を遙かに上回る量が廃棄物となって日本では毎年捨てられている。さらには昨今の流行りとしてバイオ燃料がある。有限な石油の代替物として昨今もてはやされたバイオ燃料は世界のある場所で深刻な食糧危機を生み出しているのである。

 4月に神戸で行われたG8開発大臣会合で「貧しい人たちの生活を直撃する」とG8での議題のひとつとして急遽取り上げられる見通しとなった(産経新聞)。また世界銀行も世界食糧計画(WFP)に対して各国で5億ドルの緊急支援を呼びかけ、自らも補助金の拠出を明らかにした(IBTimes)。これを受けて、米国は約200億円、フランスは約100多く円の食料援助を行うことを発表している(NIKKEI NET中日新聞)。

 さらに国連の潘基文(バン・キムン)事務総長は、「国連が持つあらゆる手段を講じて、食料価格の問題に対処すると発言」し、「複数の国がコメや小麦などの輸出禁止、あるいは輸入に対するインセンティブ導入といった措置を取っていることも国際貿易に歪みを生み、食糧不足を悪化させていると指摘し、「適切に対応しなければ、世界の経済成長、社会的発展、さらには政治的安定といった問題に発展する可能性がある」との見方を示した」という(Reuters)。そして6月には各国首脳級を集めた「食料サミット」を開催する方針だという(J-CASTニュース)。

 前述のハイチに対して、国連は緊急措置として8000トンの食料援助を追加実施すると発表しており、WFPによる子どもや妊婦らへの援助の実施、ユニセフは子どもへの食料援助と水道整備・公衆衛生事業を実施するという(CNN.co.jp)。

 既に書いているとおり、地球上で生産される穀物の量は人が飢えることがないだけの量である。となれば、その使い方が大きな問題である。世界の豊かな20%が富の85%を持つという構造そのものが生み出した仕組みのなかでしわ寄せを受けている人たちはたくさんいる。私たちのライフスタイルを見直すという中長期的な取り組みと共に、今まさに必要としている人たちに対する支援活動を考え、実施していかなければならない。

食糧争奪―日本の食が世界から取り残される日

食糧争奪―日本の食が世界から取り残される日

*1:CNNの記事では、ブルキナファソカメルーンコートジボアールモーリタニアモザンビークセネガル、エジプト、インドネシアなどがあげられている。