サッカーと経済制裁

先日行われた2006年ドイツ・ワールドカップアジア最終予選の組み合わせ抽選会で北朝鮮と同じB組に入った日本。サッカーを「国技」として、国を挙げて取り組む北朝鮮UAEを破っての最終予選進出で侮れない相手(というか、他のイラン、バーレーンも辛いですね)。ただでさえ、厳しいB組に入ったことで、アジアで韓国と共に頭ひとつ抜け出た存在の日本とはいえ、辛い戦いだろうと思います。

是非とも頑張って勝ち抜いて欲しいんですが、やはり北朝鮮を相手に2月ホーム、6月アウェイで戦わなければならないというのは、現在の両国関係を見ても辛いところです。政治の世界においては、自民党の部会、拉致議連衆院拉致特別委と対北朝鮮経済制裁の発動を検討するように政府に求めました(例えばこちらの朝日新聞記事などを参照してください)。「対話と圧力」というアメとムチで北朝鮮に対する政策を採ってきたという政府に後者を強く求めるものです。小泉政権の多々ある問題の中で、北朝鮮に向かい合う姿勢だけはまだマシだなぁと思っていましたが、今後はどのようになるのか分からないですね。

この経済制裁はサッカーの予選に大きな影響を与えるのは間違いないでしょう。小泉は「政治的な問題で試合を台無しにして欲しくない」と発言していますが、衆院拉致特別委のメンバーが会場をあとにする際に、インタビューで受けた同じ質問に「政治は政治、スポーツはスポーツ」という発言を誰も彼も繰り返していました。

果たしてそうでしょうか?今この国が抱えている問題はそうして問題を余りに単純化して考えてしまうことなのではないだろうか?という気がします。すべてはすべからく繋がっています。経済も政治も文化も人々が生活するにあたってすべて必要なモノであり、だからこそ行われたり、起こったりしています。片方のバランスが崩れそうであれば、それをもう片方が補うことによって物事は進んでいるのではないでしょうか。中国でのアジア大会の例やもっとまえの第二次世界大戦前後のオリンピック、サッカーでいえばイングランドvsアルゼンチン戦などを見ればわかる通り、政治が大きく影響します。今回の件でも日本サッカー連盟の川淵キャプテンは「日本の皆さんは北朝鮮には絶対勝ってほしいはず。北朝鮮も日本には負けられないと思っている。これは、国と国の威信をかけたすさまじい戦いになると思う」といっているように(記事はこちらのYahoo!スポーツを参照してください)。

北朝鮮に行く選手やサポーターは不愉快な状況におかれるでしょう。経済制裁が行われていればなおさらです。それ以上に戦後の問題解決すら行われていないのです。それは間違いなく政治の責任で、国政に自らが向き合うとき、反映させるべきでしょう。

もちろん、逆にだからこそ、現在政治の側面で起こっている問題を多少なりとも緩和させることができるのもスポーツの力だろうと思います。経済制裁という方法を取らざるを得ない状況にされている今だからこそ、逆にワールドカップは日本のサポーターをして「そうじゃない方法がある」ということを提示して行くべきですし、自分たちがサッカーを見ることができない状況が生まれるとすれば、そういう状況を生みだした政府に対して異議を申し立てるべきでしょう。

選手が試合だけのことを考えて当日の試合に臨むことができる体制を作ることは、政治家やサッカー連盟だけではなく、サポーターである僕たち自身であることもまた事実です。「これはこれ、それはそれ」と国内で言い合うには自由ですが、それが他国に行っても通じるかどうかはまた別問題でしょうから。