日本の支援ODAは適切に使われているか?〜スマトラ島沖地震・津波支援

インド洋沿岸各国の被害に対しては、被災者の捜索や救援のため、医療や消防関係者、自衛隊などを国際緊急援助隊として派遣するとともに、当面、テント、食糧、医薬品などの援助物資や資金を5億ドル無償で供与します。各国の被害状況を確認しながら、アジアの一員としてできる限りの復興支援をして参ります。

小泉首相は21日の施政方針演説の冒頭にこのように述べました。同様なことを22日まで神戸で行われた国連防災世界会議のステートメントでも話しています。実際に、3億5000万ドルの支援額をいち早く表明していたアメリカもそれは単なる意思表示であり「約束できる支援額は6000万ドル程度」であると方向転換したのと比べると(「暗いニュースリンク」参照)、即金で国際機関に対する2億5000万ドルの支援(ユニセフへの7000万ドル、WEPへの6000万ドルなど)を行った日本は確かに胸を張っても良いことでしょう(外務省プレスリリース)。

一方、残り2億5000万ドルは無償資金援助で行われます(外務省プレスリリース)。内訳は、当初予定していたタイが支援は必要ないとしたことで、インドネシアへ146億ドル、スリランカへ80億ドル、モルディブに20億ドルとなりました(17日に書簡交換が各現地大使館行われた)。

日本のODA(政府開発援助)の無償資金援助はいわゆる『贈与』で返済する必要がありません。JICAが行う「技術協力」もそうですが、これは外務省が行うもので、食料援助や文化無償、緊急無償などがこれにあたります。2001年には約2300億円(ODAの19.3%)がこれに用いられています。

更に今回は無償資金援助のなかでも「ノン・プロジェクト無償資金協力」と呼ばれるものです。これは特定のプロジェクトに用いられるのではなく、一般的に、相手国の国家財政を支援するODAであると言われます。1987年にこの形が開始された際、「経済構造改善努力支援無償資金協力」と呼ばれていたことからも分かります。2004年度の予算案では無償資金協力全体の2割以上があてられています。「ノン・プロ無償」と呼ばれます。

「相手国の国家財政を支援する」というのは、具体的には相手国が商品を輸入するとき、支払いをこの資金を持って日本が支払いを行うという形で行われます。相手国はその商品を国内で販売することで、その代金を財源とします。一般的に「見返り資金」と呼ばれるものです。(「ノン・プロジェクト型」無償資金には他にも「食料援助」や「食料増産援助」などもあり、後者についての詳細はブックレット『日本のODA「環境・人権・平和」』(『環境・持続社会』研究センター』発行)に、食料増産援助を問うネットワークの今井高樹さんのコラムにあります。)

これまでこの方式はイラク"戦争"の際に隣国ヨルダンに60億円の支援が行われたり、米国のアフガニスタン戦争の際に隣国パキスタンウズベキスタンに行われたことを見ても分かるように、非常に戦略的・政治的に外交の道具として用いられています。また限られた調達機関を通じて日本政府とやりとりされるため相手国の手をあまり煩わせないという面では今回の震災・津波被災の救援にあたる相手国にとっては良い面もあるでしょうが、逆に指定された調達機関の商品購入に日本の企業が利益を得る姿を想像することは容易です。

『想像』。そうです。この支援によってインドネシア政府が、スリランカ政府が、モルジブ政府が何を購入したのか?ということは公表されません。また今回のような被災地への支援で行った(と少なくとも日本国民の僕たちは思っている)援助が『見返り資金』としてイタズラに別の方法で利用されるとは思いませんし思いたくないですが、仮にそれがスハルト期のインドネシアへのODAのように、政治家や政府関係者、有力者の懐に入ったり、別の事柄(例えばアチェに展開する国軍の増強に…)に使われることがあっても、それに僕たちは意見することも難しいのが現実です。

2億5000万ドルを被災者支援に当てる贈与ODAとしての無償資金援助として、僕たちの税金を使うことに反対するわけではありません。ただ、それがどのように何に使われたのか?という『貸し手責任』を日本政府はもっと行って欲しいと思います。この『貸し手責任』を放棄した結果おこったのが、膨大な債務(例えば日本がインドネシアに持つ債権は3兆円以上)であるのですから。