アフリカの農薬蚊帳の問題とODA

【グローバルインタビュー】アフリカで蚊帳を作る日本に感銘MSN産経ニュース

 サミット及びアフリカ開発会議(TICAD4)に向けての、ジョイ・プマピ世界銀行人間開発ネットワーク担当副総裁へのインタビュー記事。このなかで、住友化学(株)による感染予防のために防虫剤練り込み蚊帳「オリセットネット帳」についても言及されています。年間3億人が感染し、100万人以上がなくなるという感染症マラリアの予防のための技術支援としてアフリカで広がっています。世界保健機関(WHO)らによるアフリカでのロール・バック・マラリア・キャンペーン(マラリア防圧作戦)にも参加しているとのことでした。
 タンザニアの蚊帳を作っている現地企業に無償の技術協力という形で現地生産をしているこの蚊帳も、2005年9月には現地に合弁企業を半々の出資で設立し、それまでの3倍近い生産を行っているようです。日本政府もこの防虫剤入り蚊帳については日本の技術協力としてさまざまな場所で喧伝していますが、もちろんこれにODAがつぎ込まれています(ひも付きですね、いわゆる)。とはいえ、この蚊帳でアフリカの人々がマラリアに感染する心配が減り、健康な生活を送ることができるのであれば問題ありません。
 しかし、一方で、この農薬入り蚊帳に対して、現地住民の健康被害を問題視するNGOもあります。(特活)サパ=西アフリカの人たちを支援する会は、ウェブサイト上で「農薬蚊帳の配布反対」について以下の2点から述べている。

(1)この蚊帳に練り込まれている農薬「ペルメトリン」には、発がん性の恐れがあるむねアメリカの科学アカデミーが指摘している。蚊帳利用者の健康を阻害する可能性が極めて高いことを裏付けている。農薬の危険性の論議の前に指摘したいのは「蚊帳に農薬が必要かどうか」である。蚊帳には元来蚊を内部に侵入させない機能が備わっているため、糸に農薬を練りこむ必要がないことは、サパのギニアでの活動が立証している。
(2)サパは、ギニア産蚊帳を農民中心に配布しているが、1張り当たりのコストは約200円前後である。農薬蚊帳1張りに対し3倍以上の数量配布ができることになる。マラリアの予防に蚊帳は有効であるが、利用者の健康を阻害し、コストの嵩む農薬蚊帳は不要で且つ、税金の無駄使いと言わざるを得ない。

 実際、サパが配布しているという無農薬蚊帳のコストは200円程度で、住友化学の「オリセットネット帳」の700円程度と比べても割高であるというのが第2の点。最初の発ガン性の恐れのある農薬の使用については「なぜ必要なのか?」という正直な疑問がやはり私自身にも浮かんでくる。同ページで、途上国からの研修生を招き農村リーダー養成研修などを行う、アジア学院の田坂氏が「蚊帳に接触した蚊を殺すことが目的であれば、有機塩素系化合物の構造を持つ、ペルメトリンのような合成ピレスロイドではなく、蚊帳の外の屋内の蚊を除虫菊で作った蚊取り線香防除することもできるはずである。」と書いているが、確かにそうであろう。
 単に「ひも付き」「利権」としてのODAではない!ということを示すためにもここの理由は明確である必要があろう。

サミットが近づいたからPKOの派遣先を増やそう?

PKO派遣先 政府、拡大模索 サミットでアピール狙う東京新聞

 サミットに向けて、いわゆる「我が国が平和に向けてできること」というのがとにかくリストアップされているわけだが、世界28ヵ国で119ヵ国9万人が参加するPKOの派遣先を増やそうというものもあるようだ。

 このため、首相官邸や外務省は「国連経費の負担では米国に次いで二位、経済力でも世界二位でこの実績はいかがなものか」(高村正彦外相)と国際社会での地位低下を懸念し、新たな派遣を模索し始めた。
 具体的には、スーダン南部に展開している国連スーダン派遣団(UNMIS)や、イスラエルアラブ諸国の国境地帯で停戦ラインの監視活動を続けている国連休戦監視機関(UNTSO)、東ティモールの国家建設支援に当たっている国連東ティモール統合支援団(UNMIT)などが候補に挙がっている。

 国連経費の負担が2位であることや経済力が2位であることが理由とは不思議なことを言う閣僚であると思うのは私だけではないはず?!

新たな緑の革命?

ウガンダ:“アフリカ緑の革命”の実態あらわに(JANJAN

ウガンダでは以前、政府が新種の種の生産および農家への配給の監督/助成を行っていた。しかし、米国政府と米国慈善団体の働きかけによる1990年代の構造改革により、このシステムは一変してしまった。動きは、バイオテクノロジーおよび化学製品製造業界により“新たな緑の革命”の名の下に推し進められている。

 そういえば日本はネリカ米(New Rice for Africa)なる新種米の普及に向けてODAによる支援をアフリカに対して行っているが、上記記事にあるウガンダである種の「善意」のもとで行われる働きかけによって行われる市場化に対し、世界銀行などが構造改革の名の下で進めた民営化による弊害がまたあらわになった格好だ。これが目的で…ではないと願いたいが、80年代の国際援助行政においては大きな問題点がやはり強くある。