ルーラ大統領のいるブラジルと日本の常任理事国への姿勢の違い

現在行われている第59回国連総会の演説の中で、遠回しながら現在の米国、そして先進諸国の姿勢を批判した人がいる。ブラジルのルーラ大統領だ。21日、アナン事務総長に続いて行った演説の中で彼は「先進国は途上国を再植民地化している」と口にした。そして、一連のイラクへのアメリカの姿勢、つまりイラクへの武力介入に触れて、結果的に人類が平和維持の闘いに破れつつあることを訴えた。

先進国による途上国の再植民地化。中国やインドにならび途上国の雄であるブラジルの発言としては極めて重い。そこには現在の国際経済システムに対する懐疑がある。実際、ルーラ大統領はそのシステムを「貧困国から搾取し、富裕国へと注ぎ込むもの」と説明している。それぞれの国で市民・民衆が望んだ政策が、先進国、そしてそれによって動かされている国際機関の政策によって取って代わられる。ブッシュ大統領イラクを始めとして、国際社会に「民主主義」を根付かせるとする一連の政策の裏にあるのは、現実には「再植民地化」というわけだ。

また国際通貨基金(IMF)の姿勢にも批判を加えた。下の記事に付け加えた通り、今年はいわゆるブレトンウッズ体制が生まれて60年になる。しかし、80年代以降のいわゆる「構造調整プログラム(SAPs)」といわれるもので行われるのは、途上国の意図を無視した一方的な「民営化」の押しつけであることが多い。それに対して、ルーラ大統領はブラジル自身が債務(借金)を返済できうるような仕組み作りのためにお金を与えるという方策を採るべきだと語った。

小泉首相の演説で、イラクへの自衛隊派遣を始めとして国際社会にどれだけ日本が貢献しているかということを羅列して、常任理事国入りを訴えた。しかし、同じく常任理事国入りを訴えるブラジルの大統領は、今現実に何が問題で、どのように変えるべきか、そしてそのための代替的な政策をどのように持っているか?ということを一端を答えてくれたように見える。

日本の常任理事国入りはアメリカに2票与えるもの…そんな批判が聞こえてくるのは、多くの日本人みんな同じだろう。日本が国連に与えることができること。それが現在では何もないということも。

日本の常任理事国入りの表明を受けて、中国の国連大使は「秘策があればわれわれも認めざるを得ない」というような発言をした。そのヒントはおそらく「平和憲法」にあるだろう。そして可能な限り現行憲法に近い形での武力の不保持だ。そんな国が国連の常任理事国になったとき、おそらく世界中は驚き、そして手を叩いて迎えてくれるだろう。