人質事件を巡って

今日夕方の福岡市天神での街頭アピールには結局仕事の都合で間に合わなかったのですが、同じNGOで活動している人がハンストをやっているところに少し顔を出しました。彼女の頑張りを認めないわけでは全くないのですが、どうしても彼女の周りを歩く人たちのアクションを捉える姿は、賛同的ではないように見えて仕方ありませんでした。

夜、そこを後にして自転車を漕いでいるとビルの2階に備え付けられた電光掲示板に、ポーランド人の女性が拉致されたという速報が流れていました。次から次へと続くこうした事件の根本的な解決はもちろん米軍、そして日本の自衛隊ら占領軍がイラクから兵を引くことであることは、そのひとつに間違いないでしょうが、同時にこうした武装勢力に対してイラクの人たちも眉をひそめている状況を考えると、それは簡単ではなさそうです。

東京新聞の記事によると、これまでにイラクでは150人以上の外国人が拉致され、30人以上が殺害されているそうです。そのほとんどは民間人。

現在もNGO代表が拘束されているイギリスは、一時的に秘密情報部(MI6)の工作により建設技術者を一時的に脱出させてものの最終的には失敗しました。現在拘束されているマーガレット・ハッサンさんは、一昨日改めて英国の軍撤退を映像を通して懇願しましたが、それを拒否した政府は、新たにバクダット南方に郡を移動させ、米軍のカバーに回っていると言います。

また日本の細田官房長官が連絡を取ったというイタリアは、先月上旬に拉致されたNGO職員が解放されるにあたって16回以上の交渉を行い、一説には100万ドルを越える身代金を払ったとも言われいますし、フィリピンは拉致を契機に軍隊を実際に引きました。日本がどれを見習ってどのような行動を取っているのか?ということを、僕たちは注視する必要があるでしょう。

とはいえ、やはり町中を歩くことすら危険になっている場所に足を踏み入れることに、僕たちはまた必要以上に注意する必要があるのは事実です。NGO「ピースオン」の相澤恭行さんの話によると、バックパッカーなどが多くイラクに滞在しているということで、今年の2、3月の時点でも10名の外国人旅行者、そのうち4、5人は日本人だったそうです。

誰でも自由に旅行することができる。それは必要な権利です。国家の力でもって、それを制限されるようなことがあってはならないと思います。第一、そうした状況を生みだしてきたのは、2003年3月以降の米英を中心とした国際社会であり、この国もその責任の一端を担っています。しかし、それでもなお、イラクに、いやイラクに限らず、こうした紛争地域に足を踏み入れるにあたって、十二分な情報収集や危機管理を持って望むことが必要とされるのは間違いありません。その辺りは、NGOに関わる人間として、今一度心にとめる必要があると改めて思います。

もちろん、それでも現在拘束されている香田さんの命を奪われるようなことがあってはなりません。そして日本政府は彼の命を最大限守るために、自衛隊の撤退という選択肢も含めて考慮・活動すべきでしょう。タイムリミットを刻々と迎えているなかで、この国がどれだけ国民のために動いているのか?谷川秀善外務副大臣の頭の悪そうな投げやりな態度は、この国の政治のみっともなさを示しているように思えてなりません。だからこそ、僕たち市民ひとりひとりが何ができるか?何をするか?を懸命に考え、行動にしていかなければなりません。