アチェで「ドラキュラ戦略」を!+義援金の使われ方

今週号の雑誌『ニューズウィーク』の表紙の見出しは刺激的です。左の画像で見れるように、「スマトラ沖大地震:援助パニック〜盗まれる物資、届かない義援金」と書かれています。NGOの現地支援の情報を流し、募金情報を紹介してきた当ブログとしては気になるところで手にとって見たのですが、ちょっとばかり見出し倒れのところがあるようです。

内容は、アチェスリランカにおける政府と反政府勢力との間のこれまでの抗争・対立、そして震災・津波によって影響を受けた後にそれらがどのように変わったか?ということについて、両地域を対称的に紹介しています。スリランカでは確かに政府とタミル・イーラム開放の虎(LTTE)との間で和平が進んでいるという現実もあるでしょうが、なかなか上手く連携している様子が描かれ、それに対してアチェでの両者のよりいっそうの対立、そしてそこに入ってくる各国の支援部隊(=軍隊)の関係、そして援助機関(国際機関、NGO)との間の対立について描かれています。

24ページに「アチェ州で救援物資を投下しているアメリカ兵は政治的な地雷原に足を踏み入れたに等しい」というキャプションが打たれていますが、インドネシアのなかでも大量の天然ガスを生み出すアチェ州を巡って、政府と地域の対立に、世界が足を踏み入れるというのはある意味大きな挑戦でしょう。一方で、多くの援助機関がアチェに入り、活動するなかで活動地域を限定され、他地域で活動を行いたいと役所に申請を行った国境なき医師団(MSF)が許可が下りずに援助が必要な場所での支援が行えないと言う現状も生まれています。(詳細はインドネシア民主化支援ネットワーク(NINDJA)ウェブサイトの13日の記事を参照してください。)外国軍の3か月までの駐留しか認めないと言うインドネシアの政府の姿勢と安易に並べるわけにはいきませんが、難しい問題です。

この『ニューズウィーク』を読みながら改めて思ったのは、アチェスリランカの人々の被災を本当に何とか支援しようと考えたとき、必然的に「政治」にぶつかるということです。スリランカの北東部地域が抱える貧困による問題が被災を大きくしたのは事実ですが、同時に先日テレビでも放映されたように地雷の問題など、その背後にある「紛争」の問題が大きく関わってきます。

アチェスリランカに限って言えば、まずはこの地域において「和平」を達成することが、「支援」になるのだろうと思います。そのためにもアチェにまだ注目が集まっている内に、こうした問題を提起し、また援助機関が現地にはいることで多くの情報を世界へと発信されることになると思います。できる限りすべてのことを明らかにするように。スーザン・ジョージが『WTO徹底批判!』(作品社)のなかで語った「ドラキュラ戦略」ですね、まさに!!


ちなみに『ニューズウィーク』の25ページには、アメリカ政府の義援金がどのように現地で使われているか?というチャートが紹介されています。3億5000万ドルの表明のうち、現在拠出されているのが7700万ドル。内、例えばスリランカには3000万ドル余りが分配され、その資金は国際NGOケア・インターナショナルへの57万ドル余りを筆頭に、スリランカ赤十字などNGOや国際機関を通じて現地の被災者の元に届くようです。

世界各国から50億ドルを超える義援金が発表されていますが、国連が今後6ヶ月間に必要だという約10億ドルには大きく足りていないのが現状。同誌によると、アメリカの過去の災害援助の支払い実態として、下記のように紹介しています。
2003年 イラン南東部地震
 支援表明額 11億ドル
 支払額  1750万ドル
2000年 モザンビーク大洪水
 支援表明額 4億ドル
 支払額   2億ドル
1998年 ハリケーンミッチ(中米)
 支援表明額 90億ドル
 支払額   30億ドル

今回の支援において少しでも表明額に近い援助が行われるように求めたいですね。