"難民鎖国・日本"に住む皆さんへ〜クルド人強制送還

「国連改革の気運がこれほど盛り上がってきた時期はない、この機会を何とかとらえたい。どういう形かはっきりしないがひとつの大きなチャンスだ」

日課のウェブサーフィンをしていると、読売新聞のウェブサイト小泉首相の上の言葉と出会いました。もちろん、これは国連安全保障理事会における常任理事国入りについての発言です。イラクへの自衛隊派遣やスマトラ島沖地震津波への多額の支援金など、米国追従と端からは見えるのですが、おそらく国際社会にアピールし続けているというもとでの判断でもあるでしょう。しかし、一方で、この発言をした前の日に、日本は国際社会から一斉に非難されても仕方がないことを行ったのを首相は知らなかったのでしょう。

難民鎖国日本を変えよう!―日本の難民政策FAQ (GENJINブックレット (32))

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18日、二人のクルド人法務省入国管理局からトルコに強制送還されました。彼らのことは報道ステーションなどで取り上げられたこともあり、ご存じの方も多いと思いますが、去年の7月から72日間も難民認定を求めて国連大学本部ビル前で座り込みを行っていました(このことについてはこちらのウェブサイトなどを参照して下さい)。

クルド人はトルコからイラク、イランにまたがる山岳地帯にすむ「最大の祖国なき民族」と言われており、2000〜3000万人ほどいる。中東では、第4の民族と言われているが、実際には各国においては少数はの地位にあります。トルコでは、憲法で「国民すべてトルコ人」と定義され、彼らの国内での存在は消されているも同然。そのため分離独立を求めています。一方、欧州連合(EU)への加盟を求めるトルコ政府に対して、EUは加盟条件として、クルド人への人権改善や拷問廃止を加盟条件に掲げています(毎日新聞)。

とはいえ、現実的にはトルコでのクルド人への迫害は続き、政府に異議を申し立てる行動やアクションを取るというのは非常に命がけのことでもあります。今回強制送還された2人やその家族は、その恐怖から日本へと逃げてやってきて、難民認定を求めていました。…にもかかわらずの強制送還。

昨日に引き続き、アムネスティ日本のプレスリリース(PR)を以下に紹介します。

クルド人父子の送還に抗議する

アムネスティ・インターナショナル日本は、本日、トルコ国籍クルド人の父と息子が日本政府により強制的に送還された件につき、重大な懸念を表明する。

父子は、トルコでの政治的迫害を逃れるため、日本に居住している難民条約上の難民として、国連難民高等弁務官事務所からも認定(マンデート難民)を受けていた。今回の送還は、こうした事情すらいささかも考慮しておらず、難民条約35条に規定されている協力義務をも放棄したものと看做しえる。

「マンデート難民」の認定を受けた人が、その自発的意思によらず送還されたのは、今回がはじめてである。また、父子は17日午前中に品川の東京入国管理センターに収容され、その翌日の18日午後に送還されていることから、送還手続きが極めて異例の速さでおこなわれている。

日本政府は、トルコ系クルド人について、トルコ国内でクルド人に対する人権侵害が続いているにも関わらず、現在までに一人も難民として認定していない。

父子は、日本に家族とともに居住していた。今回の措置はこの家族を分離させただけではなく、家族も含めて今後の危険に身を晒させる結果となる。

アムネスティ・インターナショナル日本は、日本政府に対し、父子の送還後の結果に責任を持ち、二人の身の安全を確保するとともに、残された家族に対しても適切な保護措置を講じるよう要請する。

上記PRにも出てくるように、彼らは国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)から難民認定を受けていました。にもかかわらずの強制送還。UNHCRも昨日のPRで「前例のない難民の強制送還」であると懸念を表しています。日本政府がとった措置は、国連難民法上で禁止されている「ルフールマン」、つまり「迫害を受ける危険性のある領域に人を送り返すこと」にあたると指摘しています。

これに対して、法務省は「日本とUNHCRの難民認定は目的や対象が違い、(認定)結果が異なることはある」と説明していると言います(毎日新聞)。

しかし、法的に難民認定が日本ではできないとしても、第三国定住のために日本政府ができることはあったはずです。実際に、カナダへの難民として移ることも考えられていたと言います。日本は批准している国際法すら守ることができない国であるということを世界に知らしめたいのか、なんなのか、冒頭の小泉首相が日本の役割として国際社会のなかで、常任理事国になってまでしなければならないことと言うのはいったい何なのか?ということを改めて考えてしまいます。アムネスティの書いているように、少なくとも日本は強制送還という方法を取った以上、彼らのトルコ国内でどのように扱われているか?ということをきちんと関わらなければならないでしょう。

「難民鎖国」日本に住む、僕たちが考えなければならないこととして、UNHCRのプレスリリースのなかで書かれてあることを最後に引用します。

UNHCRは、送還は国際法上、日本政府に課された義務に反するものであると見なしている。また、今回の送還は、前例がなく、海外にいる難民や災害被災者に対する日本の人道援助とは相容れないものである。

クルド人難民2家族のウェブサイト「Kurdish in Japan」(日本語)
★「クルド人難民2家族を支援する会
アムネスティ・インターナショナル日本ウェブサイト「難民」ページ
★「難民鎖国 日本を変えよう!」(上記画像は関連書籍です。画像をクリックしてください。)