十分な募金とは?〜スマトラ島沖大地震・津波を巡って

TBを張って頂いたblcさんのブログ「発見の日々」で紹介されていたのは国際赤十字社・赤新月社連盟が資金提供の呼びかけを縮小するという報道に関することでした。先ほどネットをいろいろと探してみると、ロイターが< 国際赤十字社・赤新月社連盟の発表を追って報道していました。

この記事によると、国際赤十字社・赤新月社連盟が水曜日までに集めた額が11億6700万ドルで、そのスピードは記録的なものだったようです。そして、それは今回の震災・津波被災者への今後10年間の国際赤十字社・赤新月社連盟の復興計画を行うに十分な額だと言います。今後、世界の181の赤十字社・赤新月社は徐々に募金の規模を縮小するとのこと。

同記事では国連児童基金(UNICEF)もまた当初求めていた1億4400万ドルをゆうに超える3億ドルを集め、募金のためのアピールを終了させるだろうという緊急プログラム・ディレクターの言葉を紹介しています。

この国際赤十字社・赤新月社連盟ユニセフの訴えをどのように考えるか?というのは難しいところがあります。以前、国境なき医師団(MSF)が同様に自らの活動に十分な募金が集まったことを宣言したとき、まだ募金を必要とするNGOなどは反発しました。これを報じたニュース記事のなかで、ユニセフ・ドイツ支部の人は、他のNGOの人の発言と並んで「もっと寄付を必要としている」と言っていますが、そのユニセフも募金のアピールを終了させるようです。

国際赤十字社・赤新月社連盟のウェブサイトでは掲載されていませんでしたが、米国赤十字社はプレスリリースの中でこのことを報告し、具体的な援助計画を改めて掲載しています。また、今後、米国赤十字を支援し続けるための3つの方法を書き、また更に支援をしたい人には、全米自由コープ(USA Freedom Corps)のサイトを訪れることを示しています(ちなみにこのコープはブッシュ大統領の肝いりで始まった全米のボランティア促進政策のひとつの形で、ボランティアを通じた学習を勧めるもの。なぜこれを米国赤十字が勧めるのだろうか?)。これは、前者は国境なき医師団が例えば日本で「1日50円キャンペーン」を続けることと似ています。

MSFのアピールの時も思ったのですが、基本的にNGOは自らの活動限界をしっかり把握しておくべきで、有効に使えないお金は固辞するべきだと思っています。その点で、MSFも赤十字も、また国際機関であるユニセフもそうした明確なアピールをしなければならないと思いますし、その誠意ある姿には共感します。とりわけ、緊急支援をその第一の活動とするMSFよりも、今後はもっと必要とされる団体があるはずです。先日、このブログで紹介したように、開発援助型NGOは、これまでに繋がっていた現地との接触を本格的に始め、長い年月をかけての「つきあい」が始まります。それぞれのNGOがそれぞれのNGOの活動を行うことができるような形であるべきでしょう。

もちろん、一方でblcさんたちが危惧しているような、無責任なマスコミ報道は「震災・津波被災者への募金は十分にある」という危惧を生み出しかねないような形で行われているのが現実です。何事も役割があるように、これからはまた別の形の支援が必要となります。そうしたところに配慮した報道がなされることを望むと共に、募金をする側も考え、調べることで自分自身と問題との接点を生み出すような形で活動が行われると良いと思っています。

ちなみに上記のロイターの報道によれば、国際赤十字社・赤新月社連盟は、50万人の被災者への食糧や清潔な水、ヘルスケアを中心とした援助を行い、9000人以上のボランティア、300人のスタッフが2月中旬までのプログラムに関わり、展開しているそうです。一方で、この記事の最後にこのようにかいてあります。

「政府や援助グループ、私的ドナーは70億ドル以上の支援金の拠出を誓約しているけれどもまた、それらの多くが実現するには数ヶ月、または数年かかるかもしれません」

前に紹介したように国際社会の誓約と現実の拠出金との差額は歴然とこれまで存在していることが明らかになっています。それらをどのように実現させていくか?つまり、自国の政府や関係する団体/NGOに対して、それを求めていくこと(政策提言/アドボカシー活動)もまた僕たち市民に求められている重要な「被災地支援活動」であることを忘れてはならないでしょう。

■追記:最初に上のブログで「国際赤十字社・赤新月社連盟」のリンクは、「国際赤十字委員会」の方でした。すみません、さっき訂正しました。現在は、連盟の方にリンクが張ってあります。また、tiscrivoさんの「スマトラ地震救援情報ブログ」に張られたリンクを参考にすると、このブログを書いたときにはきちんと連盟の方では発表されていたみたいですね。詳細は、tiscrivoさんのブログを参照されるか、こちらのプレスリリースをご覧下さい。(2005.1.27 23:04)