「スマトラ沖地震・津波被災国の債務帳消し/削減」を求める要請書

来月4日からG7ならびに中央銀行総裁会議が開催されますが、それに向けて下記のような要請文を、僕も所属している福岡の政策提言NGO債務と貧困を考えるジュビリー九州」が提出を予定しています。

これまでもこのブログで債務の問題について、とりわけスマトラ島沖大地震津波に関する債務問題について情報などをご紹介してきましたが、マスコミ報道などによると、債務の削減や債務の帳消しは経済に悪影響を与えるということばかりが掲載され、問題の本質が見失われようとしているとしか思えません。その辺りについて、債務の問題にこれまでも取り組んできた同団体の要請文をご覧頂き、ぜひ賛同される方はご協力頂ければと思います。おそらく、世界銀行の調査結果待ちの今、最終的には7月のイギリスでのサミットまで結論は大幅に持ち越されるだろうと思いますが、サミットでの決定も踏まえて、これを実施するためには今からの地道なアクションが欠かせません。是非ご協力下さい。

なお、債務削減・帳消しのアクションは世界中で行われています。(例えばATTAC邦訳はこちら)、第三世界の債務帳消しのための委員会(CADTM)地球の友(FoE)オックスファム・インターナショナルなど)

下記、要請依頼分と要請文です。(転送、転載、TBなど大歓迎です)

来る2月4・5日、ロンドンでG7蔵相ならびに中央銀行総裁等会議が開催されます。それに合わせて「スマトラ沖地震津波被災国の債務帳消し/削減」を求める要請書を財務省に提出します。2月2日に提出を予定していますので、賛同してくださる方は2月1日中に下記賛同送り先までに団体名/個人名、連絡先をお送りください。

最初に要請文をのせ、その後で背景説明を載せます。長文で恐縮ですが、ぜひ全部読んでご協力をお願いします。資料は、被災国の債務総額と、日本政府がもっている債権額です。債務総額は100万ドル単位、日本の債権は億単位ですが、大雑把に1ドル=100円と考えると、単純に数字を比較して、日本の債権が占める割合が想像できます。被災国の債務総額には、民間の債務も含まれていますから、公的債務に関していくつかの国がいかに大きな債務を日本に負っているかがわかります。

いつまでも途上国を先進国のくびきの下に置くのではなく、その国の国民がその国の将来を決めていけるようになるための第一歩に債務の帳消しがあると考えています。よろしくご協力をお願いいたします。


【返信用フォーム】

(団体賛同の場合)

団体名:

ご連絡先(Eメールアドレス):

連絡担当者のお名前:



(個人賛同の場合)

お名前:

ご所属等(所属団体、職業、住んでる地域、自称プロフィール、何でも結構です):

ご連絡先(Eメールアドレス):

送信先

jubilee@windfarm.co.jp

【返信期限】

2月1日中


(以下要請文)

スマトラ津波被災国の長期的復興のために、債務の帳消し/大幅削減を求めます

財務大臣 谷垣禎一殿

私たちは、先進国に住む市民の責任として、「途上国」の貧困の問題を考え、行動しているグループならびに市民です。私たちは貧しい途上国の貧困問題の解決のためには、それらの国が裕福な国々や国際機関に対して抱える膨大な債務の重荷を解消し、その資金を貧困削減対策に回すと同時に、貧しい国々が二度とそのような重債務に喘ぐことのないように、国際的な援助や投資金融の構造を見直すことが必要であると考えています。

来る2月4日、5日のG7蔵相・中央銀行総裁等の会議において、以下の事を考慮に入れ、日本としてのイニシアティヴを発揮していただきますよう、お願い致します。

1.100%帳消しも視野にふくめ、スマトラ沖地震津波被害にあった国々の債務の相当額を削減すること。削減の基準は、
 従来、債務の持続可能性として使われている債務額や返済額と輸出額や政府歳入との比率ではなく、津波被害の復旧と当該国の貧困状況を撲滅するのにいくら必要であるかを基準にすること。

2.いままでの債務契約を再検証し、独裁政権下で不正に流用されたと思われる債務は「忌むべき債務」の法理により無条件・即座に帳消しすること

3.帳消しした資金が全額被災地を含む貧困の削減に振り向けられるよう、債務国のNGOや地域コミュニティの貧困削減計画の策定、実施への参加を義務づけるとともに、その資金の使途の債権国政府、債務国/債権国両市民への報告を義務づけること

4.従来、債務救済の条件として付けられていた構造調整政策の実施など、マクロ経済的な条件はつけないこと

5.債務の削減/帳消しは、債務国側の要請を待つのではなく、債権国側の責任として実施し、一方で、格付け機関には、この削減/帳消しは、当該国の信用を落とすものではなく、逆に財政的に復活向上する契機を与えるものであることを提示すること。

6.パリクラブの決定は二国間債務にしか適用されず、それはこれらの国が抱える債務のほんの一部でしかない。IMF/世銀や民間債権者に働きかけ、多国籍債務、民間債務の削減/帳消しの話し合いを進めること。

日本の新聞各紙では去る1月12日のパリクラブの決定が「津波被災国の債務返済猶予(モラトリアム)合意」と前進であるかのように報道されましたが、私たちは今回の決定の実効性に疑問を持っています。

一つは、今回のモラトリアムが被災国からの申請が要件となっているため、国際市場での信用の格付けが下がるのを懸念した国々が辞退していることです。

もう一つはたとえモラトリアムを適用されても、猶予期間が切れた暁にはふたたび同じ重荷が被災国におおいかぶさってくるということです。

世界銀行のデータによればインド洋大津波の被災国が抱える対外債務総額は約3800億ドル(約40兆円)に上ります。被災した国々の多くは、津波被害以前から深刻な貧困問題を抱えていました。スリランカインドネシア、インドなどは国民の50%〜80%が一日2ドル以下で生活しています。また、モラトリアムを受けることを辞退したタイでも国民の5人に1人は栄養不良です。これらの国の多くは、いままで保健医療や教育予算の何倍もの金額を債務返済に使ってきました。最大の被害を受け、また最大の債務国であるインドネシアは、毎年財政赤字を出しているのに、輸出収入の約25%を債務返済にあてています。先進国はいままで、途上国の債務問題を根本的に解決することなく、返済期限の繰り延べや追加融資で問題を先送りしてきました。そしてそれらの救済策には、先進国側のニーズや計画に基づいた構造調整政策が条件としてついたために、貧富の差が拡大する一方で、途上国の債務負担の方は一向に解消していません。汚職・不正の問題は新規資金の投与による援助でも生じる問題です。これを防止するには、帳消し/援助による資金の使途を、債務国の市民みずからが決めて行く事が必要です。

米国は債務の削減に非常に強い難色を示していると聞いています。その一方で、米国はイラク債務の帳消しを主張し、日本はいち早く、米国の主張に理解を表明しました。国連ミレニアム開発ゴールにおいても、債務問題の解決が先進国が果たすべき責任として明記されています。欧州議会では1月13日、途上国債務の漸進的帳消しを進めることを圧倒的多数で可決しました。2015年までに世界の貧困を半減するという国際社会が定めたゴールに向けて、世界第二の経済大国であり、世界一の債権国である日本がその責務を果たし、債務帳消しの分野で積極的にイニシアティブを発揮されるよう、強く要望します。

2005年2月2日

債務と貧困を考えるジュビリー九州
共同代表 大倉純子
     寺嶋 悠
     高丸正人

(参考資料)
津波被災国の対外債務(2002年度)
          対外債務総額(100万ドル) うち、日本政府に対する債務(億円)
バングラディシュ   17,037            3,217  
インド       104,429           13,145
インドネシア    132,208           35,614
ケニヤ         6,031            1,115
マレーシア      48,557            5,607
ミャンマー       6,556            2,923
ソマリア        2,688               65
スリランカ       9,611            2,961
タンザニア       7,244
タイ         59,212           12,269
モルジブ          270
セーシェル         253                5 

World Development Indicators 2004国際協力銀行年次報告書2004より作成