心の病気が蔓延する世界

ラオスで25日(正式には26日)から行われていたASEAN(東南アジア諸国連合)定期外相会議は今日ASEAN地域フォーラムの閉幕により終了した。話題のひとつであったミャンマーの次年度のASEAN議長国就任は「民主化プロセスへの集中」を理由にした辞退により決着を見(当たり前か)、2020年のASEAN完全統合に向けた取り組みの強化を外相会議で確認した(細かくは東南アジア諸国連合@Yahoo!Japan等の記事を参照のこと)。ASEAN完全統合という目的を前に、ミャンマービルマの問題をどのように捉えるか?というのは、対国際社会との関係でおおきな足枷になる。逆に言えば、この取り組みを前にスーチーさんの軟禁状態に見る軍事政権としてのミャンマービルマの改革を世界中が求める声を上げることが意味がある。…とはいえ、日本はこの軍事政権下にある国にODAとか出してるんだよなぁ。やれやだ。

そのODAイラクにも供与されているのはご存じの通りだが、支援先のサマワの女性のための職業訓練施設で爆発が起こったようだ(TBSニュース)。24日にオープンしたばかりのこの施設で訓練を受けている助成が地元のテレビで日本への感謝(!)を述べる光景が放送されて以降、施設への脅迫が続いていた。そして結果が2度の爆発。こうした暴力によって恐怖を与え、今回は誰にも怪我がなかったとしても人を殺傷するような行為は許されるものではない。ただ、そうした反応が現地で起こっていることは改めて僕たちは忘れてはいけないだろう。やはり、日本は軍隊をイラクに送っているのだから。(ちなみに写真は日本が給水を行っているはずのサマワで起こった給水改善を求めるデモ。日の丸に×がつ付けられている。)

福岡にある陸上自衛隊からも明日、自衛隊員の方がイラクへと派遣される。みんなから祝福されない派遣は派遣されるかたにとっても複雑なものだろう。読売新聞によると、イラク帰還米兵の3割がメンタルヘルスに問題を抱えており、PTSD等の深刻な症状があるものから、不安や悪夢に悩まされているものも含めるとこの数字になるようだ。極度の緊張にさらされるだろうことは自衛隊員でも変わらない。「自衛隊員なんだから」というのは言い訳にもならない。同時に、イラクの人々に与える影響もまたしかり。自分の身の回りに軍隊が駐留し続け、またそれを狙う武装勢力の姿も見え隠れする中で平穏無事に暮らせるはずがない。

ロンドンやエジプトでの爆発事件/テロもまたそうだ。ロンドン警視庁の警視総監は、ロンドンが新たな爆破攻撃を受ける危険は依然あるとの発言をしている(ロイター)。こうした発言により普段の生活が大いなる緊張とストレスに晒されることになる。警視総監は「拘束されていない人物が再び攻撃を起こす可能性が引き続き残っている。また、他にも攻撃の実行が可能で、攻撃を望んでいる人物がいる可能性もある」と語ることで、「拘束」することに正当性を持たせようとするが、それが引き起こす社会の緊張は相当なものだろう。そこでは正常な判断を下すことも難しいかもしれない。

それは例えば、ロンドンの爆破事件の際に次なる標的としてあげられたイタリアのローマで、「テロリストが水道に毒」という偽情報が広まるという形になっていたりもする(産経新聞)。前にエントリーで書いたように、ニューヨークの地下鉄で始まった手荷物検査を是とする風潮にも繋がる。それが自らの足枷になってしまうとしても。

ASEAN地域フォーラム(ARF)でロンドンの爆破事件のようなテロ行為を非難するとともにそれらは「国家の脅威」であると声明を出したが、そうした脅威を国家そのものが起こしていることに対する疑問をひとりの人間として僕らは考えなくてはならないだろう。