「グローバリゼーション」について知りたい人必携

アフリカ支援がいろいろと話題になる中で良くも悪くも相変わらず使われる言葉が「グローバリゼーション」だ。みんながこの言葉を使いながらも、その定義の仕方はさまざまで下手すると10人いると10人なりの「グローバリゼーション」の意味合いが存在するようにも思われる。逆に言えば、それだけ意味不明でもあるのだが、推進派も反対派も今ひとつ議論が噛み合わない以上、それぞれがそれぞれの思惑に従って突き進み、より整合性が伴わない状況になる。

最近たまたま書店で手にした『まんがで学ぶ世界の経済グローバリゼーションとは何か?』(明石書店)は、いわゆる「反グローバリズム」と言われる側からみたグローバリゼーション論だが、産業革命以降の世界(経済)の動きを著者なりに丁寧に追っていくことで、現在の「新自由主義」というものがどのようなものであるのかを適切に表現しているように思える。

まんがで学ぶ世界の経済グローバリゼーションとは何か?

まんがで学ぶ世界の経済グローバリゼーションとは何か?

例えば、「9.新自由主義ネオリベラリズム)は何が新しい(ネオ)のか?」という章では、D.リカードが「私有財産を規制する国家に反対」で「貧困をなくせるのは富だけだ」としたことを復活させたのが新自由主義であるが、「リカードはこれほど巨大で貪欲な多国籍企業が成立するとは想像しなかった。何物も、誰も、多国籍企業には太刀打ちできない。これはまったく新しい(ネオ)ことだ」と筆者エル・フィスゴンはまとめる(p.75)。そして次のように書く。

グローバル化は地球を本当に小さくしたと言われる。確かにその通りだーー少なくとも金持ちにとっては。だが、労働者にとっては未来が小さくなった。金持ちは世界を自由自在に駆けめぐれるが、労働者や労働組合はその場でふんばらなければならない。(p.81)

この本は「まんがで学ぶ」とあるが、いわゆる風刺漫画だ。著者フィスゴンはメキシコを代表する風刺漫画家であり、彼の風刺漫画に上のような説明、コメントがついている。そう、「まんがで学ぶ」とある以上、この風刺漫画を見ないで上の言葉だけを見ても面白さは通じないだろう。風刺漫画特有の「クスッ」と「ニヤリ」と苦笑しながら、フィスゴンのブラックな(けれど真摯な)笑いを受け止めながら言葉を追うと、その真実というのも伝わってくるはずだ(ちなみに右画像はそのひとつ。911テロを風刺した漫画。書籍にもp.156に掲載されている。訳は左上→下→右上→下の順で「なんて恐ろしい。まるで広島だ…」「ベトナムだ…」「長崎だ…」「パナマだ…」「バクダッドだ…」)。

何よりも彼がメキシコ人であることが大きい。援助漬け後の債務問題、しかもその債務はすでに借りた額の7倍以上も返しながらも借金漬けである事実、また何よりアメリカが主導するNAFTA北米自由貿易協定)による一番の被害を受けているのもこの国だ。一方で、ザパティスタを初めとする市民の側の蜂起により新しい市民社会の姿も垣間見える魅力も持つ。そんな国の風刺漫画家が描く世界の姿に関心を持てないはずがない。

グローバリゼーションはよくわからない…そんなあなたに是非手にとってもらいたい一冊。とりわけ昨今の企業、多国籍企業に疑問を持つ人には最適だ。副題に「多国籍露天商で成りあがれ!」ともあるように「企業は窮乏を愛する」というのがこのほんのひとつのキーワードでもあるし。…ということで、最後は著者フィスゴンの言葉を。

「ユーモアは苦しみや不安や絶望を乗り越え、生き延びさせてくれる」(p.212)