レゲエと貧困

今年の下半期がスタートしてすでにひと月が経ってしまったけれど、この半年の僕のNGO的な対象はカンボジアとジャマイカ、そしてアフリカになりそう。カンボジアは昨年度末に引き続き、今年度もまた調査に行く予定にしているためで、こちらは純粋に「NGOに関する研究」というのが主題なのだけれど、ジャマイカとアフリカはNGOの活動という意味で焦点を当てることになりそう。

今日は、そのひとつジャマイカに焦点あてた映画『ジャマイカ楽園の真実 LIFE&DEBT [DVD]』の上映会を来月末行うことになって、その第1回目のミーティングがあった。ジャマイカといえばレゲエ、レゲエといえば夏!という感じで、福岡周辺でもレゲエなどのフェスがいくつか開かれているけれど、その陽気なリズムやジャマイカのあるカリブ海の美しい真っ青な海、ラム酒にブルーマウンテンなんかもあるよな・・・なんてイメージとはかけ離れた現実がある。

ジャマイカ楽園の真実 LIFE&DEBT [DVD]

ジャマイカ楽園の真実 LIFE&DEBT [DVD]

人口、面積ともに新潟県とほぼ同じジャマイカは、1962年にカリブ海の英領植民地で最初に独立した。観光と海外在住者からの送金、またボーキサイト哉農作物の輸出程度の限られた外貨獲得手段しかなく、ほどなく国際通貨基金(IMF)のお世話になることになる。IMFが融資をすることと引き替えに求めたのは、『構造調整プログラム(SAPs)』と言われるもので経済の自由化(もちろん民営化も含まれる)を推進するためのさまざまな具体的な計画を作り、実行することを条件にした。その結果は悲惨なものだった。

例えば、ただでさえ食糧や石油などに乏しいこの国は他国からの輸入によって成り立っていたのに、経済の自由化の推進によって、国内で自給自足することもできず、アメリカなど海外からの安い農産物に農家は他の職業に転業せざるを得なくなった。また賃金が大幅にカットされたりもした。言うまでもなく、アフリカなどの国も同様だ。そして融資されたお金によって借金を積み重ね、債務国になる。これが意味することは、より貧しい者たちの生活が保障されないことに繋がる。例えば教育であったり、例えば保健・医療への支援であったりが一番最初にうち切られることになる。だいたい、IMFの支援が成功した例自体がほとんどないのだ。

この映画、もちろんまだ見ていないけれど、いろいろな紹介を読んでみると、こうしたジャマイカの現状、そう、僕たちが『ジャマイカ』という言葉に心躍らされるものとはまた別のジャマイカの姿が見せてくれるようだ。もちろん、レゲエという最強の武器を持って見ているものを飽きさせない、頭を柔らなく事実を捉えるためにも。

ホワイトバンドの運動にあげられるほどの『貧困』にはジャマイカは確かにならないかもしれない(実際になっていない)。しかし、だからこそ捨象されてしまっている現実は間違いなくある。タイやベトナムインドネシアやフィリピンなど、日本人のアジアンムーヴメントで脚光を浴びる観光地であっても、その同じ国のなかには、またその観光地の片隅には同じように、僕たち日本人には「見えない」「見せない」貧困によって虐げられている人がいる。

現在、東京のみでしか公開されていないこの作品を夏の終わりをレゲエで感じ惜しみながら、世界の問題の一端を知るというのはいかがですか? また詳細はここでもご紹介します。