予算作成ゲームと「貧困」

仕事中、NGOと政府・政府関係機関が行っている定期協議会について調べていて、財務省のウェブサイトを訪ねると、「財務大臣になって予算を作ろう」なんていう予算作成ゲームというバナーを発見した。クリックしてみると、次のような説明書きが出てくる。

厳しい財政をやりくりし、予算を作ってみましょう。

あなたが財務大臣となって新年度予算を作ることのできるゲームです。

下のグラフは今年度予算の歳出・歳入です。

政策的支出(一般歳出及び地方交付税交付金など)をその年度の税収などで賄えず、借金(公債金収入)に依存している状態です。(プライマリーバランス赤字が発生している状態)

果たしてあなたはどのような予算を作ることができるでしょうか?

大臣の名前を入れてスタートボタンを押すとゲーム…というか、とにかく始まり。すると左上のような画面が出てくる。ページの中で、「年金、医療、介護・その他福祉等、公共事業、教育、科学技術振興、防衛、経済協力、食糧安定供給、エネルギー対策、中小企業対策、地方交付税交付金税制改正」というボタンをクリックするとウィンドウが開き、国民が賛否を発言する中で、それを考慮し、予算を増額するか、減額するか、はたまた現状維持かを選択する。増減差せる場合は、具体的に何%するか?ということまで考えなければならない。ちょっとやってみて欲しい。

やられると分かると思うのだけど、基本的にどのように予算を組んでも「基礎的財政収支赤字」となるだろう。そして「借金残高を増加させ次世代への負担を増加させる」という言葉が続くはずだ。予算組みのシミュレーションの最中から画面の左下の方で「PB赤字発生中」という文字が点滅していたことだろう。

もちろん、PB(=プライマリーバランス)赤字をなくす方法はある。ありとあらゆるものを減額、それも半分にすることだ。ただそれも中途半端じゃいけないそのほとんどを半減する必要がある。予算規模は60兆円ほどになる。ただやってみれば分かるけれど、そのほとんどを減らさなければいけない。防衛費や地方交付税交付金、公共事業費などはもちろん教育や食料などの予算もだ。到底受け入れられるものじゃないだろう。ちなみに40%上げただけでは無理だ。50%上げなければ今の予算は保てないことになる。防衛費や公共事業費などをいくら減らしても無理なのだ。

…とすれば、このゲームの意図は容易く見抜けるだろう。つまり財務省としては「もう増税しかないんですよ。分かってください」ということになる。これを広めるがための、安っぽい(しかも税金で作られた)ゲームなのだ。もちろん、今日本が莫大な借金を負っていることは分かっている。それには多少の増税は避けられないかもしれない。しかし、道路公団や公共事業の問題を改めて例に挙げるまでもなく、いらないところを切り捨て、全体をしっかりと見直すことなく増税するというならば、それは安易に受け入れられるものではないだろう。

国際協力に多少なりとも関わっている人間として、経済協力のためのお金、つまりはODAは増やせるものならば増やして欲しいとは思う。しかし、今の途上国向けの環境を破壊し、人権を侵害するような使い方をするのであれば、はたまたイラクで「車の両輪」ということばをお為ごかしに使うような状況で自衛隊セットでのODA拠出というのであれば、減してもらってもまったく構わないと思う。それはODA供与国、貸し手側の責任だ。債務の問題だって、そうしたところから生み出されているのだから。

僕も日本の財政についてはよく分からない。ただ、減らすべき所を減らすことなく、ただただ弱者から金を集めようとすること。これまた債務国が借金を日本に返すために弱者の教育や保健医療の支援を減らして返済に充てていることと何ら変わらない。弱いものが弱いままでいること。結局はこれが国内外を問わず、すべての「貧困」の原因なのだろう。