バングラの爆破事件とNGOのスタディツアー

昨日夜に新聞を手に読んでいると、バングラデシュで連続爆発が起きたという記事が載っていた(毎日新聞)。午前10時半頃から1時間の間に数百個の爆発物が連続して爆破して死傷者が多数出たということだった。17日の午前中に起きた事件にもかかわらず知ったのは翌日の夜。もちろん新聞を手にしてすぐ見ればもっと早かったのだけれど、その間に見たインターネットのニュース配信でもこの事件に気付かなかった。爆発の数はさておき、その規模からいってももっと大きな話題になってもいいだろうに、1日半以上、僕は知らなかったわけだ。もしこれが先進国で起きていたら、かなりの大きな話題になっていただろう。日本の"劇場型政治"も吹っ飛ぶくらいに。しかし、報道こそはされても小さな扱いに過ぎないのが現実だ(実際、邦人の安否に関わる情報すら扱いが小さいのはどうしてだろうか?ー在バングラデシュ日本大使館によると今年2月現在の在留法は約440人)。

驚いたのはその数的な規模はもちろんだが、ちょうどまさにバングラには僕の働いているネットワークNGOに所属しているNGOスタディツアー(スタツア)に行っている最中だからだということもある。すぐに外務省のウェブサイトに行ってみると、バングラ全土64県中63県、約300箇所で爆破が起こったという(外務省「渡航情報(スポット)『バングラデシュ』」)。今日、事務所に行ってスケジュールを見てみると、どうもちょうどダッカに戻る直前の日程だったようで、首相府前や最高裁判所、鉄道、バス・ターミナル、米国大使館などで爆破事件が起こり、また18日からダッカを中心に反政府集会が大々的に開催されるという話もあり、心配だ。

タツアは、うちの所属団体も明日、明後日と東南アジアに向けて出発する。それらの国でももちろん「安全」ということは保証できるものではない。実際に、限られた地域であるとはいえ、それぞれ武力衝突や爆破事件などの報告もある。そこにはもちろん足を運ぶことはないが、それでも「安全」であると言いきれるものではない。とはいえ、それでは「日本なら安全だ」と言い切れるかどうか?というと、それも容易に肯くことが最早できないのもまた事実だ。日本人として、そうした「嗅覚」を働かせることが、他の国にいるよりも日本の方が多少容易い…という程度でしかない。

またスタツアに参加する人の多くは「国際協力活動・NGO活動に関心・興味のある人たち」であり、どちらかといえば初心者の方が多い。スタツアを通して、現場の実情を肌で感じること、世界を知り、自分に何ができるかを感じることができるということが魅力であり、僕たちNGOとしてもそうした経験を是非とも積んで、帰国後に国際協力やNGOに関わるかどうかは別として、今後の生活に生かして欲しいな、と思っている。ただ逆に言えば、初心者であるが故に、訪問国の空気に敏感ではない。NGOの危機管理…というか、スタツアを企画・運営しているものとして(旅行会社の存在はともかく)、そうした際にどのような対処を取るか?ということを改めてしっかりと考えねばなるまい。「慣れている」から良いわけではなく、その「慣れ」で問題を起こしてはいけない。

今日、家に帰ってメールを開くとバングラにスタツアに行った団体の事務局には、無事にダッカに辿り着き、予定通り帰国できるだろう状況にあるということ、またメンバーが皆、体調も万全で日程をこなしていることが伝えられたという。ホッと胸をなで下ろすとともに、まだ帰ってきていない以上、残り僅かのスタツアをしっかりと楽しみ、またそうした爆破事件が起こっている、起こってしまうその国の状況をしっかりと感じ、考えてもらえるきっかけになればいいな、と思うのだ。