渇水・水道民営化・温暖化〜ここ数日のニュースから

四国・吉野川水系早明浦ダムの利水容量が来週半ばにもゼロになるという。昨日のお昼に貯水率が15%を切り、平年80%以上あるダムには水がない。このダムから水を得る徳島と香川の用水は第四時取水制限が始まり、貯水率がゼロになると高松でも夜間断水が始まるという(約半分の給水を早明浦ダムに頼っているため)(四国新聞記事など)。1994年以来…ということだが、確かに僕が学部時代に取水制限があった。とはいえ、なんだかんだ言いながら、実際結構断水時間でもどうしても必要であれば水が出たり(本当はダメなんだろうけれど)していたので、思っていた以上に不便はなかったような気もするが、それでも普段存分に水を使うことができる状況から考えると、取水制限があるということそれだけで気持ちの上でもインパクトがある。

水問題といえば、昨日、国内の上下水道事業への参入を進めることを目的に新しい合弁の上下水道会社「株式会社水世」というのが設立された(News2u.net日本経済新聞)。ここに関わったのが総合商社として、また世界の上下水道事業に関わりノウハウを持つ丸紅、国内の浄水処理施設管理などを全国展開する水道機工東レ子会社)、そして水道料金の検診・料金徴収事務を行うジェネッツ(実際ジェネッツは丸紅が世界的な水企業ヴェオリアとともに資本参加している)。いうまでもなく水道法の改正、そして地方自治法改正により公共サービスである上下水道が民間解放されたことが背景にあり、これから徐々に「水道の民営化/民間化/私営化」が進められていくだろう。

 ちろん、日本の水道行政を見ていると、早明浦ダムのような取水の役割を担うところは依然として行政が強く握っている。これはいうまでもなくダム建設に関わる利権が大きく関わっていて、民間解放されるのもダムから浄水場にやってきた水についてのみである、いわゆるフランス型だ。国内でも徐々にそうした動きが強まっている。郵政民営化以上に実は大きな影響を与えるだろう水道事業の民営化/民間化は実はそれほど問題にされていないのはかなり不思議。

丸紅は国外でも積極的に水事業に関わっていて、つい最近では伊藤忠日揮とともにサウジアラビアでの造水事業に乗り出すという報道もされていた。彼らが「造った水」は石油プラントに対して25年間、販売されるという(日本経済新聞)。また同じく丸紅と日揮は日本企業で初めて中国で二酸化炭素の排出権を取得して、中国での温暖化ガス削減事業に乗り出すようで(日本経済新聞)、商社が次なる「金のなる木」としての「環境」という問題に取り組む姿が顕著になり始めた。京都議定書プロセスへの参加を行っていない中国はもちろん大きな二酸化炭素の排出量を行う国であるために、そこに何らかの方法で削減を行うことは非常に大切だが、しかしながら結果的に中国の排出権を日本が購入することで日本での排出量が結果的に減らされないということであればほとんど意味がないように思えるのだが。

欧州では同じように今年もまた熱波が襲い、干ばつが起っている地域もある。国際的な環境NGOである世界自然保護基金(WWF)は、昨日欧州都市の気温が軒並み1970年代から比べて最高で2.2度上昇していて、今後も更に上昇が続く可能性があることを発表した(ロイター)。一人一人の生活スタイルを見直すことは大いに必要だが、世界の大いなる方向性を示すものを改めて必要としている気がする。戦争や紛争で人類が滅ぶよりも先に地球がダメになる前に。