海を渡る反ジェノサイドTシャツに思う〜アフリカの貧困と選挙

先日のエントリーに書いたホワイトバンド・プロジェクトの日本版「ほっとけない 世界のまずしさ」キャンペーンに、なんだかんだと結局関わっている。もちろん、東京にある事務局から何かを受けて…ということではなくて、必然的に関わるというのが正直なところで、働いているネットワークNGOのニューズレターに特集を組んだり、来月12日にはその特集を踏まえての講座を開く予定だ(こちらの左下にある記事を参照)。キャンペーンであるが故の問題は多くのNGO関係者、そして何より東京の事務局の百戦錬磨な強者たちも十分に分かっていると思うし、それでも今、日本でこのキャンペーンを進める必要性については"ある程度"大同小異的に賛意が得られると思う。"方向性"としては「仕方ないよね」というところはあって、何人かの事務局メンバーの皆さんの顔を思い浮かべると、「一緒に頑張りましょう」と口にしたくなるのが正直なところ。"清濁併せ呑む"なんて自民党NGOになる必要はないけれど、そうしたことが必要なときもあるだろう。そしてそのひとつが今なのだろうとも思っている。…というのが、昨日のコメントでかけなかったこと。

話は変わって、先月後半に、「students against genocide」というスーダンダルフール地域のジェノサイドに反対する学生たちが作ったTシャツについていろいろと書いたけれど(6/16エントリー記事7/26エントリー記事を参照)、注文して約1ヵ月ようやくアメリカをTシャツたちが飛び立つようです。受注生産ということもあって、少しはかかるよなぁと思っていたらほぼ1ヵ月。この呼びかけに答えてくださった皆さんに改めて感謝。あとは無事に届くことを祈っていてください(笑)。このTシャツを日本で他に購入した人とかどのくらいいるんでしょうか。ふむ。

そのスーダン。先日、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のグテーレス高等弁務官スーダンダルフール入りし、国内避難民となっている人たちに「依然として危険な状態にある故郷へ、強制的に帰還を迫られるようなことは決してない」と伝えたという。国境なき医師団のレポート「ダルフールにおける迫害、脅迫、そして援助の不足」で次のように書かれている。

恐怖感は依然としてダルフール中に蔓延している。避難民キャンプは名ばかりのものである。ダルフールの避難民らはMSF に対し、現在彼らが住む地域を警備しているのは、村を焼き討ちにし、家族を殺した当の武装勢力の一部だと語っている。人々は恐ろしさのあまり、もと住んでいた土地に帰ることができずにいるが、現在の場所に留まることにも恐怖を感じている。(p.26)

まさにそうした状況の中で、グテーレス氏から、こうして言葉にして伝えられることだけでも国内避難民の人たちの大きな支えになっていることだろう。またグテーレス氏がナイジェリアで行った、ダルフールの政府と、対立する勢力との間の話し合いを経て、「年末までに和平協定に到達するよう双方に圧力をかけることをわれわれは国際社会に要請している」と訴えている。これらにきちんと答えることは、国連の常任理事国になりたいこの国の姿勢として当たり前だと思うのだが…。

ちなみに常任理事国アメリカが2月に発表した「2004年国別人権報告書」のなかで、ジンバブエキューバ・中国とならんでスーダンを「自国の市民の人権保護を怠っている国」として名指しをしているが、UNHCRや上記の国境なき医師団を初めとする世界中のNGOやそれを応援する市民もまた多くはそれを共有できるだろう(スーダンに関しては)。

現在でも暴力やレイプによる被害者があとを経たないようで(こちら)、政府また対立する勢力との間の停戦を守らせるための努力が国際社会には必要だ。現在、スーダンにはアフリカ連合(AU)の平和維持軍が入っているが、国際的にこのアフリカ自身による和平の道のりを支援しようという動きもある。ダルフールのジェノサイドを多くの人に知ってもらうための活動はもちろん、このAUのPKFを資金的に(実際お金がないがために十分にスーダンに人員を割くことができていない)サポートしようと、「大量虐殺介入基金(Genocide Intervention Fund:GIF)」という基金が立ち上がってもいる。

さて、日本には何ができるだろう。来月11日の衆議院選挙に向けて各政党がマニフェストを出しているが、スーダンに直接的に触れている政党はもちろんない。民主党が「アフリカなどへの人道支援」という言葉を入れているのがせいぜい(岡田民主党代表は今年5月にスーダンを訪問している)。こうしたマニフェストへの市民の対応も重要な選挙への関わり方だと改めて思う。もちろん、国会議員にとっては何の利益にならないだろうが、国会議員の仕事は間違っても地方にお金を落とすことではないは明らかだから何も問題はないけどね。