エイズとカンボジア(1)〜軒下に住む子ども

明日12月1日は「世界エイズデー」だ。最近、国連エイズ合同計画(UNAIDS)発表した数字によると、現在世界では4000万人超のHIV/AIDS感染者が生活をしており、また20005年に新たに490万人が感染し、310万人がなくなっている(図はこちらから)。4000万人超の感染者の内、最も多いのがサブサハラ以南のアフリカで、2580万人と半分以上を占める。もちろん新たな感染者の内320万人、また亡くなった方の内240万人を占める深刻な地域である。ホワイトバンドキャンペーンではそうした地域への更なる国際社会の支援を求めたが、現状を見るとそれでもまだまだ足りないと言うのが現実だろう。また一方で、UNAIDSの高官は「西欧、とりわけ感染の新たな最前線になろうとしているアジアでエイズに対する関心が十分に高まっていない」と述べた(毎日新聞)。西欧?と驚くことはない。この国では2004年に新たなHIV/AIDS感染者数がとうとう昨年1000人の大台に乗り、今年になってる畏敬で10000人を越えたのだから。言うまでもなくこの国は後進国なのだ。7月に行われた「アジア・太平洋地域エイズ国際会議」で小泉首相エイズも含む三大感染症の撲滅のための基金へ5億ドルの拠出を行うことを明らかにしたが、国内もまたおぼつかないままだ。

エイズといえば、今年3月に訪れたカンボジアエイズ孤児の通う民間の施設を訪ねた。福岡のNGOJVC九州ネットワーク(Q-net)」が支援するカンボジアNGO「SFODA(エイズの犠牲になった家族と孤児のための開発協会)」が運営するもので、Q-netではSFODAのエイズ孤児青少年職業訓練プロジェクトに対する支援を行っている。カンボジアでは今急速にHIV/AIDSが広がっており、感染者が毎日100人を越える。USAIDSによるとカンボジアエイズ感染者数は17万人(0-49歳。2003年)と言われ、また13000人以上の子どもたちがエイズ孤児となっているのだ。人口が1400万人ほどのこの国では100人に1〜2人がエイズ感染者であるということになる。この数字はリアルに響くかもしれない。

親がHIV/AIDSによって亡くなったSFODAの施設に絵画や技術を学びに来る子どもたちももちろんHIV/AIDsへの恐怖に怯えているだろう。いや、それ以前に親がいないことによる"貧しさ"のなかで如何に生きていくか?ということがリアルで切実な問題かもしれない。この施設にはエイズ孤児以外の貧しい状況に置かれた子どもたちも通ってきているようで、そのなかの一人の"自宅"を訪れたことは、以前ブログでも紹介したが、家などではまったくなく、高床式の建物の下に寝床を置き生きているというのが現実だった。すぐ隣を巨大なダンプカーが土埃を濛々とあげて走り回るなかで口元にクロマー(いわゆる手ぬぐい)を当て言葉を交わす彼らの姿は見ていて辛いものがある。ここが"自宅"だと建物の下を指さす子どもになんて言葉をかけてよいのかも分からないのが現状だ。

ただハタと思うのは、彼らにとってそれが如何に苦しかろうと辛かろうと、それこそが彼らの現実であり、リアルであるということでもあった。普通に建物の中に暮らし、電気や食べ物・水に困らず生きていく我々にとっては、非現実的であるその状況は彼らの生活そのものであるのだ。もちろん、彼らにモノを与え、カネを与えることで解決することもたくさんあるだろう。しかし、逆にそれは彼らにとってはリアルではない。安易にモノを支援しないということは彼らのリアルにむやみやたらに無責任に手を出すことによって起こるだろう変化に対する一種の制御でもあるのかもしれない(もちろんそれら一切を拒否するわけではないことはいうまでもない)。Q-netが支援するNGOへの支援により何よりも良かったと思うのは、子どもたちが「夢」を語れることだと思った。人の家の軒下にすむ彼も笑顔で「画家になりたい」と言った。母親も「彼が画家になりたいというのであれば、応援したい」と笑った。それを見て、この支援に対する信頼が生まれたのも事実だ。

エイズの話から少し離れてしまったけれど(ごめんなさい)、カンボジアでは実はもうひとつエイズ問題に取り組むNGOを訪問している。これについても以前ブログに書いたけれど、もう少しきちんと書いてみようと思う。これは明日以降ということで許してください。ともあれ、明日は世界エイズデー