深海の環境を守れ!

今から30年前、ストックホルムで地球環境に関する国際会議、国連人間環境会議が開かれました。レイチェル・カーソンの『沈黙の春』が発表されたのもそのころ。『宇宙船地球号』なる言葉も生まれました。先進国は、第二次世界大戦後の復興が落ち着き、自然環境にも目が向けられるようになりました。

ちょうどそのころ、環境と経済、とりわけ貿易を巡る問題として「ツナケース」と呼ばれるアメリカのキハダマグロの輸入制限を巡る問題が起こりました。メキシコの伝統漁法によるマグロ漁でイルカの混獲率が高いとして、アメリカが自国の「海洋哺乳動物保護法」により輸入禁止にしたことが原因でした。環境意識が芽生え始めていた当時、この問題はアメリカの協定違反(GATT)と裁定が下されましたが、環境保護団体からは猛反発をくらい、新しいWTO協定では環境に保護することが前文に加えられるまでになりました。

しかし現在でも同様なことが起こっている!とNGOがキャンペーンを張っているのが「深海保全連合(DSCC)」というネットワークです。グリーンピース世界自然保護基金など20を越える団体が参加しています。巨大なトロール網によって「海山」と呼ばれる海中の山々が破壊され、深海環境を壊し、また深海生物を(前述のイルカと同様に)混獲しているのです。HOTWIREDに掲載された写真の中にはそうして破壊された状況が紹介されています。地球上の3分の2を占める公海がこうした漁法によって破壊されているのです。

今年2月には海洋科学者1100人が深海トロール漁の一時停止を求めるために国連へ請願書を提出したり、11月に国連総会で行われる漁業・海洋煮感する決議のなかにこの漁法の一時停止をコスタリカ政府と共にNGOが提案を行ったりしています。

しかし、HOTWIREDの記事の中で研究者が語っている通り、アフガニスタンイラクスーダンと国際的な紛争に目が向いている中で、この問題がクローズアップされるのは非常に困難であり、また国際的な世論もまた「人々は、深海も自分たちに関係があるところだとは思いにくい」と研究者が述べている通り、自分も含め、問題の存在に目を向けること、またそこから想像を膨らませることも難しいのも事実かもしれません。

しかし、DCSSのように問題を顕在化させ、表に出したNGOの活動によってその問題が徐々に僕たちの問題になっていきます。ブログの記事になるのもそういう一歩だと思います。能動的に動けなくても、この情報を人に伝えていくことが、まず第一歩なのだと思います。ぜひ。