氷河が溶けてお金が回る

アジア高山の氷河が溶けている。中国北西部の氷河を調査に同行した記者がそうルポタージュしています(毎日新聞記事)。氷の厚さが薄くなり、夏には末端だけ溶け出していたところが、頂上も含めて全体が一気に溶けているそうです。1975-85年に57cm減っただけだった厚さが、その後の20年で7mちかく減り、体積として1割近く減ったといいます。

また「化石の氷」と呼ばれるヒマラヤの氷河もそれ以上に融解が進んで、年平均で1m、今後数十年で100mあるひとつの氷河が消滅する危険性もあるといいます。その原因にはアジア地域特有のモンスーン気候が影響しているということで、そこに地球温暖化もあわせて、融解を進めているのではないか、と考えられています。

氷河の消滅はその周辺地域の環境はもちろん、人々にも大いに影響してきます。例えばそれは水害であり、水不足。相反するようですが、氷河が溶けることで、水量が増え水害が誘発されると同時に、融解によって山の保水機能が消滅し、一時的な水量増加と共に、これまで雪解け水などバランス良く行われていた水供給が不安定になるのです。

ロシアの批准によりようやく前に進みかけた京都議定書をほくそ笑むかのように、自然はどんどんとその影響を受けています。

その一方で、京都議定書に記された「二酸化炭素排出権」を巡って、議定書の施行に向けて、各国で次々と動きが出ています。日本でも国際協力銀行(JBIC)と日本政策投資銀行が、国内企業と共同して排出権の獲得のための基金を年内に創設することが明らかになりました(時事通信社Yahoo!ニュース記事参照)。この国内企業には、商社や電力会社、石油会社など20-30社が参画するそうで、基金総額は1億ドルにも及ぶそう。京都議定書が決められた当初から、この排出権を巡る議論は活発になされています。今回の基金も今年頭ごろに夏までに設立されると報道がされていました。

二酸化炭素などの温室効果ガスを排出できるというこの権利は、年間のガス排出量の上限を超えた国が、下回ったところから購入したり、またそうした制限を持たない途上国での省エネ事業により削減できた量の一部を受け取ることができるという制度です。

今回の基金は、排出権を途上国から受け取り、出資割合に応じて排出権を配分するという内容。JBICの省エネ事業に関する融資と政策銀行の基金運営能力を会わせて行われるといいます。世界銀行が作った「世界炭素基金」や、イギリスでの排出権取引所創設などが進んでいるなかでの、日本での基金の設立。

果たして、基金・排出権の問題と氷河の融解はどのように調和し、問題解決がなされるのか?"経済"の概念に振り回された環境政策の限界をこの考え方に見るような気がします。