北極をワニが闊歩する日〜最近の温暖化を巡る調査から〜

ロシアが地球温暖化を防止する京都議定書に署名をしたからといって自分たちの国の政策は変わらない…そう繰り返すのがアメリカ政府。京都議定書には加わらないと宣言したブッシュ大統領が再選され、その方向性はより強固になりこそはすれども変更は容易ではないでしょう。そんななか、ここ半月ほどの間にアメリカの研究者からその方向性に警告を発するような調査結果が発表されています。

ペンシルバニア大学のリチャード・アレイ教授は論文の中で、現在の大気中の二酸化炭素濃度は少なくとも過去43万年の間で最も高く、さらに上昇を続けていると言います。産業革命以前の2倍になっているそうです。

遠い昔、今から5000万年前の始新世と呼ばれた時代、ワニが北極をはい回っていた時代(!)に1万年で10度も上がった頃と比べると大したことはないとしても、それでも現在の倍に二酸化炭素の排出量がなると、3度前後気温が上がると言います。そしてこれよりも気温上昇が低くなると言うことはほとんど考えられず、逆に大きくなる方が多いそうです。(詳しい内容はこちらを参照してください。)

また同じくアメリカで、NGOの「世界気候変動に関するピューセンター」が出した報告書によると、アメリカは過去100年間で0.6度も気温が上昇したが、部分的に見てみると、例えばアラスカではこの50年で2〜4度も暖かくなっているそうです。そして、今後100年で4〜7度上昇するといいます。

それに合わせて野生動物は徐々に北上をはじめており、チョウやアカギツネなどの生活地域も北上しています。結果、アカギツネの北上でそれまで生活していたホッキョクギツネが生活の場を追われるように、生物界の体型が変わってきています。世界各地で1500種類が地球温暖化によって何らかの栄養を受けているそうです。アメリカでは調査した150種類の内、半数がそれにあたるそうです。そして、2050年までに全体の3分の1が絶滅するという報告書もあります。(詳しい内容はこちらを参照してください。)

それは人間といえども例外ではありません。世界中の海面が2100年までに約90センチも上昇する可能性があるといいます。北極やグリーンランドアイスランドなどの氷の融解が急激に進む結果です。太平洋諸国の島々が沈むという話はよく聴きますが、上に書いた北で生活する多くの人々、とりわけ先住民の人たちの生活様式にも大きな影響が出てくることは間違いありません。

前述のアレイ教授は、二酸化炭素濃度のこれ以上の上昇をくい止めるには相当な努力を要するが、決して不可能ではないと、言っています。

そのためには、アメリカ、そして京都議定書には含まれていないものの、中国やインドのような途上国のなかの温暖化ガスの排出量が増えることが確実視される国々の参加を如何に促すか?ということが、国際社会・市民社会の課題であることは間違いありません。

過去50年間で最もひどい干ばつに追われるなど、異常気象に襲われる中国の現実は、そうした様子をかいま見せます。

よくわかる地球温暖化問題

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