"あいのり募金"で考える市民と企業の協働

昨日に続いてフジテレビのバラエティ番組「あいのり」の話です。"ラブワゴン"に乗って世界中を男女数人が旅する中で恋愛が育まれるこの番組。現在、アフリカ東部エチオピアを旅行中というのは、前に書いた通り。アフリカの社会の現実に向き合って厳しいことをいわれながらも旅をする様子は、幸福な旅だなぁと改めて思ったりします。

その「あいのり」。アフリカに入った4月1日放送以降、「多くの問題で苦しむアフリカの人々への」支援として「あいのり募金」というものを始めています。11月28日までの約8か月で800万余りのお金が集まっているようです。これまで、幼稚園のグラウンド整備費やエイズ問題に取り組む団体の活動資金を得るためのパン焼き釜の購入、孤児院の毛布購入、小学校の校舎整備費や書籍購入、文房具購入費などに計100万円が使われています。

番組を見ると、実際に遊び場がなかったり、学校でも満足に勉強できるだけの設備や費用がなかったりする様子が映し出されます。それを見て、「募金ぐらいしよう」と思う人がいるというのは、正常だと思うし、いいことだと思うんです。前回の放送で、じゅん平が言っていた「俺らが出来る事」だとか「本当ちょっとの事でもいい」という言葉にも、またそうした事に否定的だったソルトの「綺麗事が私ホンマに嫌い」だとか「努力は続くんかな」なんて言葉にも合う、行為だと思います。手軽だし、かといって、クリックして他の誰か(企業)がお金を出すというだけでは味わえない「満足感」というものもあるのも事実でしょう。

一方で、この「あいのり基金」には気になる表現があります。「■はじめに」と題されたトップページには、募金されたお金が「100%アフリカの子供達と、アフリカの様々な問題に使われます」とあります。

確かに、以前、アフガニスタンへの援助を行う福岡のNGO、「ペシャワール会」に多くの寄付や募金が集まったりしたときに、会の中村代表がいわれていたのが、「われわれの団体は寄付・募金して頂いたお金の9割は現地での活動に使われる」ということでした。そして同時に、ユニセフなどの国際機関などの場合、現地に行くのは3割ほどであとは人件費や輸送費などで使われてしまうということでした。

実際、多くのNGOの活動で集められたお金は現地での活動に使われます。人件費などは他の事業でまかなわれたお金によって行われ(ただし現地で現地の人を雇うお金は入らない場合がほとんどだろうと思います)、なるべく現地にお金を落としてくるようにしています。そういう意味では、100%のお金がアフリカのために使われる「あいのり募金」はより望ましいのかもしれません。

しかし、この番組HPで語られるのは、そうした事ではありません。募金を集めるためのスタッフの人件費だとか、募金を届ける際の必要経費、また事後の確認などにお金がかからないのだということを強調します。しかし、よくよく考えてみると、フジテレビというのは立派な会社です。全員が給料をもらい、「仕事」として活動しています。そして、この番組を作るためにお金をスポンサーから手に入れています。これは、NGOの人たちが通常業務の中で「寄付・募金」を募る行動となんら変わりはありません。

また「現地での宿泊費、食費、交通費、通訳の費用などがかか」るとHPに書かれていますが、逆にいえば、それによって現地にお金を落としてくるという事もまた大切な事なのではないかなぁとか思ったりするのです。

募金を100%アフリカの人のために使いたいがために「ラブワゴンでアフリカを実際に旅し、色々な施設を訪れる「あいのり」だからできることかもしれません」と書くわけですが、実際に現地に事務所を作り援助を行うNGOもたくさんありますし、そのスタッフの給与はもちろん「寄付・募金」のなかから出すことは基本的にはないでしょう。またラブワゴンだけではなく多くのスタッフもまた行き来し、大手多国籍企業の航空機を利用し、番組は作られているのでしょうから。

にもかかわらず「通常の募金と違う」と一番最初から打ち出すというのは、どうなんだろうか?と思ってしまいます。某国での"ラブワゴン"の旅には現地の NGO関係者がコーディネーターとなっているという話を聞きました。だからこそ、アフリカでのような旅も可能なのかもしれません。しかし、その一方で、そうしたずっと活動を地道に続けているNGOなどが行う「募金」とは「違う」のだといわんばかりのこのシステムはなんだか変だなぁと思ってしまうのです。

たぶん、それはNGOの側がきちんと説明をできていない、もっといえばアピール・アドバタイズできていないというのもあるのでしょう。それはもっと勉強しなければいけないし、上手くやらないといけないとも思います。その一方で、そうした側面では「プロ」であるこうした人たちが、そんなNGOや団体と協力して行うことをもっともっと考えて欲しいし、できる人、やりたいと思っている人がどんどんと動ける自立的な社会になると思います。もちろん、お金は出せないけど…という人も、いろいろとできることをできる社会に。