募金とイラクの自衛隊

相変わらず、イラクは戦争・紛争状態が続いています。今日の報道によれば、国連は30日に行われるイラク国民議会選挙への国際監視団は派遣されない見通しを明らかにしました(共同通信)。監視団の安全確保が困難でなおかつイラク人監視員もほとんどいない状況であるためだと言います。またスンニ派住民が多いバクダッドなど4州は多くの有権者が投票できない状態で(朝日新聞)、もはや何のために「選挙」を行うのが分からない状況になっています。

まさに"今"の社会を表象している出来事とも言えます。世界的に、もはや「意味」はその存在意義を失ってしまい、目の前の"方法"にのみ埋没しているということです。小泉政権郵政民営化しかり、NHKvs朝日新聞と矮小化されてしまった番組改編問題しかり、本質的なことは全く無視されてしまっているように思えます。それはポスト・モダンの悪しき潮流なのかもしれません。そして、それは、スマトラ島沖地震津波被災地への支援もまた同様で、一般市民たる僕たちができる方法と喧伝された"募金"もまた、それがどこでどのように何に使われるのか?ということを明確にしないまま、「とりあえず募金」という問題へと成り下がってしまっている側面もあります。問題は、誰に、どのような方法でどのように使われるのか?ということであるにもかかわらず。

日本のイラクへの自衛隊派遣についてもまさにそうです。昨日のことを少し引っ張りますが、小泉首相は施政方針演説でこのことを次のように話しています。

この1年、サマワでは約600人の自衛隊員が交代で、住民との交流に心を砕きながら、病院での医療技術支援、給水活動、学校や道路の補修を実施しました。………資金面の支援は、発電所や病院の復旧、港湾整備、学用品の支給など、14億ドルに上っており、水や衛生面で延べ200万人に、教育面で600万人の生徒に、日本の支援の手がさしのべられました。………イラクが一番苦しいときに日本はイラクの国造りに協力してくれたと、将来に渡って評価を得られるような活動を継続していきたいと思います。

「助けてやったことを評価して欲しい」とする支援ほど鬱陶しいものはないと思うのですが、それはともかく、自衛隊員が行う支援がどのようなもので、具体的にどれだけ資金=税金が使われたのかは、大まかにしか明らかにされません。使い道の評価を僕たちはすることができません。例えば、5月に帰国した陸上自衛隊第1次支援群が行った活動について、民主党井上和雄衆議院議員が第159回国会中に提出した質問趣意書にある程度は明らかにされていますが、税金を使った事業であり、それを知りたい!と僕たちが言ったときに提出された回答としては不十分です。また同じく井上議員が第2次支援群について提出した質問趣意書は、内容が資料を請求するものであるから趣意書に適切ではないとして撤回させられたと言います(議員本人とのやりとりによる)。

かといって、他にイラクでの支援内容が明らかであるか?といえば、すぐに求めている人が目にすることができるような状態で明らかになっているわけではなく、結局、どれだけの資金を使ってイラク支援を行っているのか?というのは明らかではありません。自衛隊員の給料など滞在費でかなりの資金=税金を使っているといわれても、結局のところ詳細は分かりません(この辺りは同じく第159回での民主党長島昭久衆議院議員質問答弁が参考になります。全額で270億円相当が15年度にあてられているようです)。

これは僕たちも反省を十分に要することであることは認識しています。イラク自衛隊駐留に、また昨日のブログに書いたスマトラ島沖地震津波被災支援にどれくらいの資金=税金が使われているか?ということをもっともっと求めなければなりません。そうでなければ年金で作られたグリーンピア((財)年金保養協会)のようなことがまた起こります(読売新聞)。

またこれは上記にも書きましたが、スマトラ島沖地震津波被災地や新潟の被災地などへの「募金」についても同じことです。その募金がどこでどのように使われるか?ということをチェックすることができないのであれば、むしろしない方が現地のためになるかもしれません。日本のODA(政府開発援助)によって結果的に「債務」として途上国を苦しめている問題で問われている「貸し手責任」と同様の問題を引き起こしてしまうからです。少なくとも、自分が募金したお金の行方を見極める事なき募金集めはやめた方がいいと思うのです。逆に言えば、そこまで責任持って行って初めて、それが本当の「支援」になるのです。大変ですが、だからこそやりがいがあるし、心の通じた援助・支援となります。

おまけ。

この画像はオモチャメーカーの田宮が発売している「陸上自衛隊イラク派遣隊員セット」……こんなものまででているなんて…。後ろの車両は含まれないそうですが、これでイラク自衛隊員が身近に!…っておいおい。何を売ってるんだろうなぁ(苦笑)。なんだかすごい世界ですねぇ。ちなみに後ろの「軽装甲機動車イラク派遣仕様」も売ってます。このアマゾンのレビューが面白くて、「教育的価値」というのを評価するところがあります。ちなみにレビューの一人の方の文章は皮肉な感じで面白いです。以下。

一流メーカーのタミヤさん、良くこのバージョンを製品にしてくれました。その勇気に頭が下がります。私は、基本的にプラモは、そのフォルムを眺めるため、実物のデカールなど極力貼らない主義ですが、この製品は別。なるべくリアルに作りましょう。出来れば、反体制派の攻撃による、弾痕などのキズも付けましょう。窓に、割れた跡などを付けるとなお良いでしょう。日本の歴史に残る事件の象徴として、何年か後に、一層価値が高いものになるでしょう。早いうちに買わないと、絶版になりそうな気がするのは、私だけではないでしょう。