小手先ではなく…〜京都議定書発効を前に

今月16日に発効する「京都議定書」で、日本は08〜12年までの間に1990年レベルから6%を削減することを求められています。しかし一方で、これまで日本では排出量が増加しており(2003年度で8%の増加)、この国際公約の達成を果たすには非常に困難を伴うのが現状です。僕たち一人一人が生活の見直しをはかる一方で、やはり国家/政府レベルでの対策が必要になるのも事実でしょう。それは認められているとは言っても、「排出権取引」のような小手先の対策では結局のところ「数字」ありきの対策にしか過ぎないのも事実。公約を達成することはもちろん大切ですが、根本的にこれを果たすための政策が求められます。

欧州連合(EU)に加盟したばかりのポーランドでは、二酸化炭素の削減のために原子力発電所の建設を考え始めているとのこと。90年に中止した計画を再開することを考えているといいます(毎日新聞)。もちろん、これは記事の中でEU高官が発言している通り、「核廃棄物を生み出す原発の建設は、地球環境を守るという京都議定書の精神に反する」ものであり、「原発建設でCO2は削減しても)運転で生じる核廃棄物が新たな環境負荷を招く」というのが正論でしょう。EUに求めて入ったとはいえ、そしてEUは8%の削減を求められているなかで、難しい判断をポーランドは求められています(一方で、バイオマスなどの再生可能エネルギーを20年までに14%までに増やす計画もあると言います<毎日新聞>)。

一度にドラスティックな変化を生み出すことが可能なわけではありません。漸次的に進めなければならないものもあることでしょう。しかし、先祖返りのような方法ではない方法を生み出すことを考えなければならないと思います。それはもしかすると「環境税」のようなものの存在かもしれません。現段階では、経済産業省や経済界において激しい反対がありますし、使途がはっきりしていないと、僕たちの生活にも大きな影響を与えるだけに賛成しかねるのも事実ですが。

また途上国が今回の京都議定書の枠組みに入っていませんが、これから工業化が進むなかで、この問題とはきちんと向かい合っていかなければならない時期に入ってきます。「援助」の側面から考えてみても、温暖化の問題に向かい合って今から取り組めるものもたくさんあるでしょう。少し前、僕の関わっているNGOにも「ソーラーパネル」を利用した途上国支援について相談にこられた団体の方もおられましたが、支援先が援助に一方的に頼ることなく、徐々に自らで取り入れることができる仕組みを作ることも大切です。日本のこの分野の持つ技術力を上手く生かすチャンスでもあるでしょう。改めて、それは「排出権取引」のような目先のものではないのだと思うのです。

先日、日本の大手電機メーカーが太陽電池の増産に相次いで乗り出したという報道がありました(産経新聞)。太陽電池システムの価格が低下したそうです。(10年前の3分の1)。また、間伐材による森林バイオマス発電も来年度末までの実用化に向けて、日本の企業が世界最長レベルの連続発電時間を達成したという報道もありました(共同通信@Yahoo!ニュース

企業の社会との良き関係を考えるとき、それに対して僕たちが真剣に向き合ったとき、初めて日本の、世界の環境問題を改めて考えることができるのだろうと思うのです。あ、そういえば来週末からいよいよノーベル平和賞を受賞したワンガリ・マータイさんが来日されますね。京都議定書の発効に合わせての集まりに参加されたりするとのこと。どこかの集まりで彼女の話を聞く機会がある方、ぜひその様子も聴かせてください。(毎日新聞の主催イベントはこちら。また募集は終わりましたが上の画像の『ソトコト』(木楽社)でもイベントがあります。)