福岡の地下鉄で手荷物検査が始まる前に。

21日に再びロンドンの4箇所で起こった爆発事件は、犯人と見られる男性の銃殺もあわせて、さらにきな臭い様相を呈してきた。これは世界へも徐々に伝播して行っているのも間違いない。

例えばパキスタンムシャラフ大統領はテレビ演説のなかで、7日のロンドンの爆発事件がパキスタン系だったことへの批判に「容疑者のうち3人はパキスタン系だが、英国生まれで英国の教育を受けた。パキスタンにも問題はあるが、英国にも過激派組織はある」と応える一方で(朝日新聞記事)、国内のイスラム過激派に対してすべてのイスラム神学校の政府登録や武器保持の規制、また非合法組織の取り締まりや過激な出版物の発行禁止などを掲げた(河北新報社(共同))。

またタイではマレーシアとの国境に近い南部のヤラ、パタニ、ナラティワートで昨年以来続く爆弾事件や銃撃事件で800人以上がなくなっており、イスラム過激派によるテロとして、政府が非常事態地域を指定することが出来る法案を発効している。これは集会の禁止や新聞検閲、旅行制限、令状なしの容疑者拘束に登頂までおこなうことができるもので、「治安維持」の名の下での政府・首相の強権に対する批判もジャーナリストの側からは出ている(読売新聞朝日新聞など)。

そして極めつけは、ニューヨークの地下鉄での乗客へのセキュリティチェック=手荷物検査だ(ニューヨーク・タイムスまたは読売新聞)。22日から始められる手荷物検査は抜き打ちで、バスや鉄道でも行われることになるそうだ。ブルームバーグ市長は「乗客の権利を少し侵害することになるが、安全確保との適切なバランスを見つけていきたい」と語っているというが、1日450万人以上の利用者がいる地下鉄の検査を行うのは非常に人手も必要だし困難なことは明白だ。こちらも早々に市民グループは「理由のない捜索を禁じた憲法修正条項に違反する」と批判しているが、自治体側は「希望しないならその場から立ち去ることも出来る」と意に介さない状態だ(共同記事<神戸新聞サイトへリンク>)。

数百台の監視カメラがあり、2週間前に爆破事件が起こったばかりであるロンドンですら2度目の爆発を避けることができなかった。確かに監視カメラは犯人の存在を掴むことには役だったが事後的だ。ニューヨークの地下鉄での手荷物検査は事前対策の最後の手段に近い。それでも全員がチェックされない以上、事件が起こらないとは限らない。またロンドンの事件を受けて、日本でのテロの危険は?という議論も喧しいが、結局それを担保するのは、不正義に権力=暴力を行使しないということにしかないことはもはや明白だろう。("不正義"の解釈は難しいのも事実だが。)

となると、現在派遣準備が進められている自衛隊の第七次イラク復興支援群というのは改めて考えなければならないのは明白だろう。ここで派遣される陸上自衛隊は福岡県春日市にある第四師団が関わる。アメリカの駐日大使は自衛隊サマワ駐留延長に強い期待をしているそうだが(読売新聞)、自衛隊への砲弾が着弾するような状況で(共同通信)、何が一番必要であるかにはそろそろ気付いてもいい。福岡の地下鉄で手荷物検査が始まる前に。