かつお節でワクワク夏休み

自分が食べているものがどこから来ているのか?ということを知りたいという人が少しずつ増えているのは、スーパーに立ち寄っても「○○さんの作った△△」のようなポップが立っていることからも分かる。目に見える生産者による安心感は、けれど家に帰ってその野菜を取りだしたときにはすっかり名前を忘れている程度のものだったりもするのだが。とはいえ、先日の中国の人民元切り上げの報道の際に「これによって野菜の値段が上がったら10円でも買わない!」なんて言っている消費者もいるわけで、「賢い消費者」という言葉はよく聴くけれど何を持って「賢い」のかはてんでバラバラだ。

この週末、読みふけったのが藤林秦・宮内泰介編著『カツオとかつお節の同時代史―ヒトは南へ、モノは北へ』(コモンズ、2004年)だ。

カツオとかつお節の同時代史―ヒトは南へ、モノは北へ

カツオとかつお節の同時代史―ヒトは南へ、モノは北へ

バナナと日本人―フィリピン農園と食卓のあいだ (岩波新書)』をずっと前に読んだことがあるけど、この鶴見良行さんのバナナ研究からエビ、ヤシと続く市民調査研究の系譜に、このカツオ&かつお節がある。「こんなおもしろさを専門家だけに独占させておく手はない」(p.307)と終章に書かれているが、この研究に携わる人だけではなく、読むものをワクワクさせ、「へぇ〜」と唸らせ、世界と自分が小さいけれどしっかりと繋がっていくという確信を持たせるものはない。さらにはそれらが単なる専門家だけではなく身近な関心興味から作られているからなおさらだ。

かつお節の原料たるカツオがどこでどのように獲られているかという話はもちろん、獲るために必要な餌がどこから来て、それらを獲る漁師の生活はどのようなもので、またかつお節を作るための材料(例えば燻すための木材)がどのように生産されているか等などとにかく痒いところに手が届くというか、「知りたい」欲望を十分満足させる、ある種のオタッキーなほどの情報量も、調べている著者たちメンバーが楽しんでいるからこそ、こちらも満足しながら読み進めることになる。

「食」という普段自分たちの身の回りにあるものから世界を見る・・・なんていうことを主題とした講座や勉強会などは数あれど、それを自分たちで調べてやろう!という夏休みの自由研究的な興味・スタンスから作り上げられる「市民研究」は、本来的な意味でNPONGOの活動の初端であるとも言える。

この夏、自由研究で悩む小中高校生諸君には、少し分からなかったり難しかったりするところはあるかもしれないけれど、是非この本を手に楽しい夏を過ごして欲しいし、何よりも変に専門家然としたり、行政の下請け的な仕事に邁進するNPO/NGOの皆さんにも是非この本や、それに連なる一連の著作に目を通して改めて「市民として社会で何を考え、何を行うか?」を考えてもらえるといいと思う。・・・そんな僕自身も改めてバナナ→エビ→ヤシ、そしてナマコへと続く著作をまずは読み進めていきたいなぁと思っている2005年夏!

あ!そういえば、この秋、『カツオと…』の編著者の宮内さん、福岡にお呼びする予定です!また詳細は後日!