"MOTTAINAI"ブランド化の向こう側

サイトを見て回っていたら、こんな記事があった。

「もったいない」ブランド 伊藤忠環境保護で展開

合言葉は「もったいない」−。伊藤忠商事は26日、ノーベル平和賞受賞者でケニア環境相ワンガリ・マータイさんが提唱する「もったいない」をブランドにして商品販売する事業を始める、と発表した。収益の一部はマータイさんが創設した植林運動に寄付される仕組みで、消費者や企業が買い物を通じて環境保護に参加できる。

 マータイさんは、限られた資源を大切に使うという意味を表す言葉として「もったいない」の持つ精神を提唱している。

 植林を表す緑の葉っぱに「MOTTAINAI」とローマ字で書いたロゴマークをTシャツや布バッグ、食器などに印刷して販売。例えば1700円のTシャツを買うと、うち300円がマータイさんが立ち上げた環境保護活動を行う非政府組織(NGO)「グリーンベルト運動」に寄付される。風呂敷や扇子など日本の伝統工芸品も商品にする予定だ。(共同通信@Yahoo!Japan

いよいよ「もったいない」もブランド化だ。まぁ驚くことはない。この「もったいない」という言葉を広めようとした毎日新聞も最初からそうした意図を持っていただろう。2月14日に行われた東京本社編集局長によるマータイさんへのインタビューで彼はこう話しかけた。

日本は「3R」運動を展開しています。Rはリデュース(ごみ減量)、リユース(再使用)、リサイクル(再利用)の頭文字です。資源を有効活用して、ごみの量を減らすという循環型社会を目指す運動です。日本語では「もったいない」という言葉で言い表されます。カラオケやツナミのような国際語です。この環境保護運動について、どう考えますか。(毎日新聞

もちろん、マータイさんの同意がなければ何も進まないし、彼女が国連の女性の地位向上委員会で「もったない」と発言したことからも、彼女がこれに深く感銘を受けたことは間違いないが、上のインタビューで彼女が応えたのは「「もったいない」というのはすばらしい価値観で、世界にも広めたいと思います」という風に応えたのに過ぎないのに毎日新聞は見出しに「「もったいない」、国際語に」と打った。マータイさんよりも編集局長の言葉を採用したらしい(苦笑)。さらには14日から始まって、23日のマータイさんの帰国時にはちゃっかりとTシャツを手にさせて写真を撮っている(毎日新聞)。

ちなみに、この写真と、「もったいない」ブランドを大展開中の毎日新聞の販売サイト「毎日プレミアムモール」のなかの「"MOTTAINAI"Tシャツ」のサイトの写真を見比べてみると不思議な感じだ。彼女の服装や空港内の撮影場所などから察するに同じ場所で撮影したに違いないのだけど、持っているTシャツが違う。モールの方の写真は現在のTシャツと同じで、毎日新聞のサイトの写真とは少し違う。これは合成?不思議だ。

さて、伊藤忠商事はこのブランド化を「世界初の循環社会型環境ブランド」として展開すると説明している。具体的には次の通りらしい。

伊藤忠はこれまでに、様々なブランド商品化や、ライセンスビジネスに取り組んできたノウハウを最大限生かし、今回の『MOTTAINAI』キャンペーンが地球規模で取り組まれることを視野に入れ、『MOTTAINAI』事務局と協力し、環境への配慮を基準とした商品、再使用可能な商品、再利用を企画基準とした商品など3Rの理念を基に企画された商品化を行いますが、伊藤忠が得意とするコンテンツビジネス(音楽配信、映像化、商品化)など、独自の視点からも順次推進致します。

これからマータイさんの名を借りたいろんな製品が作られ、販売されるんだろう。もちろん、Tシャツ1枚買えば、300円分、彼女の活動へ寄与することになる。残り1400円は何に使われるのか知らないが、少なくともウェブ上でこのTシャツを作っているAnvil社の無地Tを買うと700円ほどで買うことができる。あとプリント代がかかるのだろうけれど、700円もかかるはずがないから、これらが毎日新聞伊藤忠商事などの儲けになるんだろう。んー、まぁこれだったら昨日紹介したスーダン支援Tシャツの方がお洒落だしいいな。(ちなみにAnvil社は素材こそアメリカ産綿花を利用しながらも作っているのはNAFTA自由貿易が国境を越えて楽に行えるようになったと言うことで中南米に工場を作って生産しているようですね。)

またトートバックは原価がよくわからないけれど、これを買うくらいだったら、シャプラニール=市民による海外協力の会フェアトレードショップ「クラフトリンク南風」で今大プッシュ中のバングラデシュの生産団体がジュートで作った「エコレジバッグ」の方が便利そうだし随分いいと思うんだけど、どうでしょうね。ちなみにこのエコレジバッグもマータイさんが記念講演した京都議定書の発効を記念して作られたもので、キャンペーンをしていますよ。

あ、忘れていたけれど、上の編集局長のインタビューの中でマータイさんはこんなこともきちんと言っている。グレンイーグルズサミットでも大きな話題になったアフリカ支援。マスコミはこっちをちゃんと報道して盛り上げていくべきなのではないのかな?

「アフリカの貧困を解消するには、債務の軽減、公平な貿易、ODA(政府開発援助)などの援助が鍵となります。最貧国は援助金をもらっても債務返済は無理です。アフリカが目の前のこぶを乗り越えて前進できるような援助をしてもらいたい。また、受け入れ国は腐敗を撲滅し、援助金をきちんと使用しなければなりません。国際社会の援助と統治の改善の二つが重要です。」