選挙、ハリケーン、ホワイトバンド・ミレニアム開発目標

日にち的には明日が総選挙の日。各種マスコミでは現在の小泉政権がそのまま…という結果になりそうだけれど、やはり911以降のこの国の現状を考えれば考えるほどそれじゃあダメだと思う。例え政権与党の候補者が腕にホワイトバンドを巻いていたとしても。ちなみに僕の選挙区の自民党前副総裁は市内の講演で11日の投開票日が「同時多発テロ記念日」であるからこの日がいいと首相と話し合い、「参議院の反対派の同時多発に巻き込まれて、ビルから転げ落ちた」なんて不謹慎にも述べるような人間だ(朝日新聞@Exciteニュース)。まったくもってやれやれなのだ。

失言・失態といえば、ハリケーンの被害救済に後手後手となっているブッシュ大統領は支持率低下が伝えられるが、バーバラ・母ブッシュは、アストロドーム球技場に非難している被災者のことを「誰もがもてなしに感激して」おり、「球技場にいる多くの被災者はまず悪しかった。彼らにとってここは恵まれている」と語ったという(日刊スポーツ)。またライス米国務長官戒厳令下の被災地を片目にフェラガモのお店でショッピングしたり、ブロードウェイでの感激に勤しんでいたようだ(暗いニュースリンク)。「人間らしい」かもしれないが、別にそうした人間が公職に就く必然性は全くない(同じ意味で小泉首相も見ることができるけれど)。

さて、このブログでは「お腹いっぱい」かもしれないけれど、いよいよ10日のホワイトバンドデー。前のエントリーに書いた通り、僕は久留米でのイベントに参加。久しぶりにDJ(話す方)的な役割で少しワクワク。多くの人が集まって、いろんなことを話し合ったりすることができて、さらに何か次に繋がるモノがあればいいなと思う。14日から始まる(16日まで)国連特別首脳会議(ミレニアム・サミット)のなかでどのような話し合いがされるかは、この10日の世界的なキャンペーンの成果にかかっているのも事実だ。ちなみに小泉首相は与党が過半数を取る選挙結果になれば国連サミットにも出席する予定だそうだ(朝日新聞)。

ミレニアム・サミットに向けてようやく9日に日本はひとつの報告書を発表した。ミレニアム開発目標MDGs)の目標8に関する報告書である『開発のためのグローバル・パートナーシップの推進(Building Global Partnerships for Development:Japan's Contribution to MDG 8)』がそれだ(外務省和文概要はこちら)。MDGsは世界の開発目標の約束であり、全部で8つの大きな目標があり、それらは18の具体的な目標と48の指標で構成される(例えばこちらの外務省ウェブサイトなど参照)。

目標8は「開発のためのグローバルなパートナーシップの推進」という報告書と同名のもので、具体的には「政府開発援助(ODA)」「市場アクセス」「債務の持続可能性」などというのが具体的な指標であるが、今回の報告書もそれに合わせて、「政府開発援助(ODA)」(第1章)、「貿易・投資・その他政府資金の流れ(OOF)」(第2章)、「債務救済」(第3章)がその内容となっている。報告書である以上、これまでに日本が行ってきた具体的な施策についてまとめられており、「何をやってきたか」というところのよい点に関しては光を当てられているが、いうまでもなくその陰には多くの社会・環境・人権問題が隠れているのは間違いない。それはこれまでのこのブログの中にもいくつか出てきているはずだ。

ホワイトバンドデーを前に外務省はこれを提出してきた。このキャンペーンに関わっている人はすでにご存じの通り、日本の「ほっとけない 世界のまずしさ」キャンペーンもまたこの目標8に大きな焦点を当てている。 (1)「援助の量と質の向上」、(2)「返済不可能な債務の無条件帳消し」、そして(3)「不公正貿易の抜本的改善」である(こちら)。日本の報告書を見て「頑張っているじゃないか」というのはちょっと待って欲しい。それならば、こんなキャンペーンを日本のNGOが懸命に進めるはずがない。改めて、このホワイトバンドデーに世界がどのような約束=ミレニアム開発目標をしているのか?、また自分たちは何を求めていく必要があるのか?ということを考えて欲しい。

最後に最近発表されたいくつかの報道を紹介する。

その1。世界保健機関(WHO)は先月末に調査報告書『健康とミレニアム開発目標』を発表した(WHOウェブサイト)。このなかでは芳しい結果が得られていないことが明らかになっている(JANJAN記事)。サハラ以南のアフリカが最も見通しが暗いことを指摘する一方で、「世界すべての地域に、健康問題が著しく深刻な地区が存在する」としている。そして「1990年代の動向がこのまま続けば、貧困国の大半は健康に関するMDGsを達成することはないだろう」と警告している。

その2。アジア開発銀行(ADB)は7日にミレニアム開発目標のアジアでの達成状況を発表した(ニュースリリース(PDFファイル)報告書のページ)。この中で1日1ドル以下の再貧相は23ヵ国で31%から20%に減少したが、アフガニスタンでは5歳以下で死亡する子どもの数は25%以上を占めるという。

その3。同じく7日に国連開発計画(UNDP)が発表した2005年度の「人間開発報告書」では、先進国の貧困解消に向けた貢献を強く求めている。報告書の中の指数(人間開発指数)では18ヵ国で低下しており、MDGsの達成が困難な状況を指摘している。例えば乳幼児死亡率1/3は2045年まで達成は困難としており、今後10年間では目標よりも多くの乳幼児が亡くなるという(朝日新聞)。またODAの供与に関しては大幅な増額がなければ目標達成に必要な途上国の社会的インフラ整備が整わないだろうとしている。ちなみにUNDPは『国際社会による資金援助の拡大、農業補助金など不公平な貿易政策の是正、武力紛争の解決の3点が必要」としている。

明日のホワイトバンドデー。単に白いバンドを手に巻くだけではなく、世界の中で何が起こっているか、そして何ができるか?を改めて考える機会になれば素晴らしいと思う。久留米近郊の方、よろしければ久留米まで足を運んでください。