「天災か、人災か」〜『貧困』を巡って

随分とご無沙汰です。ようやく選挙ショックからもなんとか立ち直ったので(笑)、更新を再開。再開早々ですが、先日勤務先のメルマガの編集後記に書いたものを下に紹介(多少変更したけど)…といっても別にさぼっているわけではなくて、やっぱりホワイトバンドキャンペーンやそれが求める「貧困削減」を考えつつ、災害のことを考えてみるとそう言うことを感じるからだけど。タイトルはさも「災害」について書いているように見えるね…うん(苦笑)。

J.シーブルックの『世界の貧困―1日1ドルで暮らす人びと』を書評のために改めて読み返しつつ、「貧困」ということ、フーコー的に言えば知の考古学的なあり方、構造的な「貧困」の創られ方を改めて意識したこともあって、手が動いた結果なのかもしれない。全然十分な質・量を備えてないけれど、今後の自分にとってはマイルストーン的なものになりそうです。

世界の貧困―1日1ドルで暮らす人びと

世界の貧困―1日1ドルで暮らす人びと

「天災か、人災か」

メキシコ湾岸を襲ったハリケーンカトリーナ」の被害はかなりの規模でした。数千人に及ぶかという予想もある中、水の引かない沿岸部では未だに通常の生活に戻ることもできません。社会が混乱し、また疾病が蔓延するなかで、改めてアメリカ国内の貧富の格差の大きさを感じます。一方で、その様子を見て現大統領の母親は「球技場にいる多くの被災者は貧しかった。彼らにとってここは恵まれている」などと語る姿は、まさにそれを体現しているともいえます。

日本にもそれを追うように、台風14号マーワー(マレーシア語で「バラ」の意味)がやってきました。これだけ台風・ハリケーンの恐ろしさが分かっていても、それでも被害者が出てくる状況を見ると、いくら注意してもし足りないのが天災だと改めて思います。

先日10日は、世界の貧困問題に眼を向け、2000年の国連ミレニアム総会で決められた、世界の約束「国連ミレニアム開発目標MDGs)」の達成を求める市民のアクションであるホワイトバンドキャンペーンが行われました。日本各地でも様々なイベントが行われました。NGO福岡ネットワークでも政策提言委員会の講座を行いました。

ちょうど今日から国連ミレニアムサミットが開催されています。お昼のニュースでその様子が報告されましたが、報道されてるのは、日本の常任理事国入りの問題のみで、この会議が開催される一番の目的が報道されることはありませんでした。全くもってヤレヤレですね。

このホワイトバンドキャンペーンやMDGsが求める貧困削減。改めてこうした動きのなかで「貧困」とはなんだろうか?ということを考えます。そこには開発や貿易などによって「いつの間にか行われる」構造的な問題が潜んでいるのは間違いなく、この「貧困」は誰がどう考えても「人災」です。

しかし、国際機関や国家機関などが行う貧困削減のための活動は、それを「人災」として認識しているようにはどうしても思えません。あたかも「貧困問題は天災である。だからみんなで協力して何とかしようよ!」という動きになっているのではないでしょうか。

上記の通り、台風やハリケーンなどの天災も大変な被害をもたらします。そしてどうしようもないことです。しかし、貧困問題は改めて、自らが何とかすることができる「人災」であり、その背後の構造的な問題を考え、解きほぐしていく作業を少しずつ行うしかないのだということを改めて考えるここ数日です。

NGO福岡ネットワークメールマガジン『Fun!Fan!FUNN!』33号「編集後記」より)