地方自治体の水道事業と選挙

佐賀市長選挙。以前のエントリーでも触れたことがあるけれど、佐賀市は水道の民営化を睨んだ民間委託を推進する自治体として気になっていた。ブログに書こうと思いつつ、いつの間にやら選挙が終わってしまっていた。結果は、行革推進会議を通じて民間委託を推進していた現職が破れ、水道局出身の元市幹部が当選した(佐賀新聞特集ページ)。

NGOのニューズレターに佐賀市水道事業の民間委託の経緯についてまとめたので、それが発行されてしばらくしたらこのサイトにも掲載しようと思うのだけれど、とにかく水道事業の専門家など全くいない行革推進会議のなかで進められる民間委託→民営化の議論は、「水」という人間が生きていく上で必要不可欠でありかつ、市民が選択不可能な水道事業のあり方を全く無視した「商品化」の議論に終始していて、あまりにお粗末であった(第3次佐賀市行政改革推進会議)。よく佐賀市民は声を上げないものだ…と思っていたけれど、この選挙結果。やはり基本的な木下佐賀市政への猜疑心も大きかったようで、国政における郵政民営化とは全く逆に真摯に行われる選挙はきちんと結果を生み出す。

水道事業に関する両候補者の考え方は次の通りだった(佐賀新聞社HP)。


木下敏之氏(現職)
(「バスや水道事業など行政改革の方針は。」という問いに対する答え)
新市の収入の約3割は国の交付金等で、今後、減る見込みである一方、福祉等に要する費用は増加する。合併後も財政は厳しく、一層の行革が必要。民間でできるものは極力民間に任せ、5年間で職員数を160人減、職員の給料は5%カットする。(中略)水道事業は、料金を値上げしないため、安全性を保ち民間委託を進めていく。

■秀島敏行氏(新人)
(「バスや水道事業など行政改革の方針は。」という問いに対する答え)
目的は、公共のサービス。改革の視点は、「官と民」の役割分担。(中略)水道は、本来の目的である「水質の確保」と「災害時」に市民への供給を約束できる「案」として、半減の60人とする。

これまでの市営水道の仕組みが最良だというのではなく、よりよい方策を模索すべきだけれど、利益こそがすべての企業委託(民営化も含み)によって起こる問題は世界中の例を見るまでもない。ただ、今回勝利した秀島氏にしても、単に公共サービス=市営であるとの認識であれば、結局、市の財政は破綻する。また、水道の問題を単位水質確保や災害時への供給の約束というだけを検討するのではやはり心許ない。そこには2003年の世界水フォーラム時にNGOらの合い言葉にもあった「Water For Life」、つまり生きていくための水という人間・地球環境に配慮した水資源の活用を改めて感がなければならないだろう。英国ウェールズ地方などに最近成功事例も見える市民社会組織への委託という方法も含めて、今後の佐賀市の水道事業がどのような方向へと改革されるのか注視したいところだ。

ちなみに現職を民主推薦、新人を自民・社民推薦というねじれ現象、さらには自民党系候補者の勝利(安部幹事長代理も応援に来たようだ)というところとこの問題を合わせて考えるとまた不思議な構図が浮かび上がってくるよね、ほんと。