国益と地球益〜「国際協力ってなんだろう?」


今年も国際協力・NGOについて学ぶ一般公開講座「NGOカレッジ」が始まりました。今年は全2回と少ないですが、各回シンポジウム形式で複数のゲストをお招きして基調講演とパネルディスカッションを行います。第1回目はいわゆる「国際協力」「NGO」らしく海外で行う国際協力をテーマに行いました。

ゲストは、新田恭子NPO法人セカンドハンド代表に基調講演をお招きし、その後のパネルディスカッションにもそのまま参加して頂き、他のパネラーとして前田徹さん(外務省国際協力局国別開発協力第一課長)、小泉幸弘さん(国際協力機構(JICA)アジア第一部東南アジア第三チーム主任)、西愛子さん(日本国際ボランティアセンター(JVC))にお願いしました。コーディネーターは重田康博さん(FUNN副代表、JVC九州ネットワーク代表、九州国際大学教授)でした。

広いテーマなのでひとつの事例としてカンボジアを中心とした東南アジアを設定しました。カンボジアは今年で和平15の年になります。これまでの日本の支援、NGOの活動を振り返り、紹介して頂きながら、実際に行われた援助についてや様々なアクター間の協力や問題点などについてお話しして頂きました。

広く一般の方を対象とした講座でもあるので、話の総論として取り立てて新しいことが自分自身あるわけでもないのですが、それでもディスカッションのなかではいくつか興味深いものもあがりました。一番はやはり、政府・国のODA(政府開発援助)に代表される国際協力のあり方と、NGOによる援助の関係性です。

ODAが何を目指すのか?というのは長くずっと語られてきた問題です。2003年のODA大綱改正までは、「嘘」でも日本のODAが目指すものは「地球益」でした。NGOが常に基調としている大切なものです。それが改正後、「国益」を求める援助のあり方へと徐々に変化していっています。しかもその国益が日本企業、とりわけ大企業に対する利益と変わっているものがほとんどであり、無償資金協力という贈与ODAでは8割が邦人企業に行っているという話もあります。そのなかで、実際に国際協力・援助が何を目指し、行っていくか?ということは改めてしっかり確認する必要があるものだと言うことを改めて感じます。

100歩譲って「国益」をODAに求めるとすれば、その国益とは果たして企業益でいいのか?ということは改めて考える必要があるでしょう。パネリストからの、NGOへの寄付金の使い道には厳しい目があるが、果たしてODAという遍く市民から集められたお金の使い道に市民が意見することが非常に少ないこの国の現実の指摘はやはりその通りでしょう。そして、日本の4割の食糧自給率から考えると、逆に言えば、6割は海外からの生産物でできているわけです。この世界との繋がりを意識して「国益」を考えることすらしていないのもまた現実です。

パネリストの皆さんから出た共通する意識として、国際協力・援助は自立と発展性を促すものである必要があるとの指摘もまた重要でした。前田課長の「消えないのは人のなかに蓄積された力」であり、それを育むことこそが大切だというのはまさにその通りだと思います。自ら望むことをやりたいと思うだけの情報があり、それを選択する判断力を生み出すような支援を行うことは、どのアクターであれ、改めて大切だと思います。

さて、第2回目のシンポジウムは今度は逆にわたしたちが住んでいるところをテーマに国際協力を考えます。食や教育、子どもたちをテーマに、今ここで何ができるのか、またそのためにどのように考えればいいのか?などについて、NGONPO、マスコミからのゲストのお話を聞きたいと思います。ご関心のある方は是非ご参加下さい。詳細はこちらにありますので、よろしければ是非ご覧下さい。