イラクの子どもたちの栄養不良を前にして

昨日5日にもバクダッドの書店街で自動車爆弾が爆発するというできごとがありました(時事ドットコムCNN.co.jpNIKKEI NETなどの記事を参照してください)。結局、2003年のイラク戦争開始以降、悪化するイラク情勢に変化の兆しが見えません。ニュース記事を紹介する『世界の出来事〜NGOの視点から』にも書きましたが、そんなイラクからNGOが撤退するという動きもあります(こちらの記事参照)。

そうしたイラクの状況によってグッとしわ寄せを受けるのが古今東西どこでも同じように子どもたちです。以前、小松太郎さんの『教育で平和をつくる―国際教育協力のしごと (岩波ジュニア新書)』を紹介したエントリーにも書きましたが、シニカルに彼らの生活の中に戦争や紛争が取り込まれ、異常な状態が生まれ、彼らの今後の生活に大きな影響を及ぼすことは間違いない状態ですが、まさに「いま」イラクの子どもたちに深刻な状態があることが、日刊ベリタの記事で紹介されています。

戦禍のイラクで子供450万人の栄養状態危険レベルに 避難民への食料供給は限界<無料記事>
【バクダッド5日=IRIN】学校や住居周辺への爆撃に加え、専門家らは「イラクの子供たちの栄養状態は非常に危険なレベルに達している」と指摘している。貧困と治安の悪化がその原因であることはいうまでもない。無差別爆破テロなど限りのない暴力行為の連鎖が多くの人々に強制退去、避難を強いており、救援に当たる非政府組織(NGO)などによる食料供給が避難民らに十分に行き届かないのが現状だ。(以下、略)
日刊ベリタhttp://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=200703060056312

この記事によると、5歳以下の子どもの10人に1人が体重減少、5人に1人が身長の伸びに影響があるという栄養失調状態であり、下痢や肺炎などの疾病に苦しんでいるとのこと。一方で、政情不安により救援にあたるアクターが活動できる状態でもないためにさらに悪化するしかない状態にあるのです。日本イラク医療支援ネットワーク(JIM-NET)事務局長の佐藤さんのブログ「くろよん平和主義」にも「イラクの復興そのものがだらだらしている」という記述もあって、「うーん」と米国の占領や日本をはじめとする国際社会の対イラク戦略、そしてイラク政府そのものもまたそうであり、同時に反政府的なテロに代表される動きもまた同時に行き詰まり感を迎え、そうした影響にNGOもまたさらされ、結局イラクの子どもたちへの悪い循環を生んでいるような気がします。

結局のところ、未だにイラク周辺に自衛隊を送っているこの国の一員として、きちんとイラクの現状と向き合う責任を果たさなければならないのだろうと思うわけですが、イラク支援を行う国際協力NGOへの協力以上に何ができるだろう?と改めて考えてしまいます。

戦火の爪あとに生きる―劣化ウラン弾とイラクの子どもたち

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