平和をつくる方法

最近出版された、伊勢崎賢治さん(立教大学教授)の『武装解除 -紛争屋が見た世界 (講談社現代新書)』(講談社現代新書)を昨日鹿児島から帰る新幹線のなかで読みました。他にも気になる本を数冊持って5時間以上の移動時間に備えていたのですが、この本を読み始めて止まらなくなりました。

武装解除  -紛争屋が見た世界 (講談社現代新書)

武装解除 -紛争屋が見た世界 (講談社現代新書)

徐々に日々の報道からスマトラ島沖地震津波の情報が少なくなっています。アフガニスタンイラクでも同じことが起こり、「非日常」から「日常」へと変わっていく現状は分かっていながらも、どうしようもない無力感を感じます。でも、逆に今だから何かしてやろう!と思ったりもします。

同じ被災地でもスリランカでは進み、アチェではより深刻さが増している、政府と政治・武力勢力との間の抗争・対立に関して、少しでもその存在がマスコミの報道などを通じて多くの人に知ってもらえる良さがある一方で、しかし同時に、こうした世界の問題は単にお金やものを支援するだけでは結局何も解決しないのだということを改めて思います(もちろん必要なのは間違いないのですが)。とりわけスリランカアチェでの対照的な「和平のあり方」に強く思います。そこで手に取ったのが、この本だったのです。

伊勢崎さんの本は5年くらい前に手にした『NGOとは何か―現場からの声』(藤原書店)で、ちょうどNGOに積極的に関わろうとしていたその時でした。「"善意"を"本物の成果"に!」と帯に書かれたこの本をすごくいいタイミングで手に取ったと思います。それだけ刺激的でした。

NGOとは何か―現場からの声

NGOとは何か―現場からの声

そして先日出た『武装解除』でまた大きな刺激を受けました。国連によるミッションで第一線で関わってきた東チモールシエラレオネ、また日本政府によるミッションで関わったアフガニスタンでの武装解除(DDR)の現実をこと細かく見ていく上で、改めて自らの国際協力・NGOに関与すること、平和運動への姿勢を考えさせられることになりました。

軍隊は文民の統治が必要であり、それはアフガニスタンイラクで行われているような多国籍軍によるものでは難しいということ。そして日本がイラクで行っている自衛隊の派遣は、その多国籍軍の指揮下にも入らないという文民統治どころか、自衛隊の行動すらも決めることができない現実について改めて頭の整理になりました。

同時に、NGOに対する厳しい目線は改めて本書でも語られます。例えばアフガニスタンの地方で活動するNGOに対して、

開発援助を担うNGOは、その伝統的なNon-Politicalの思想から、いかなる政権をも支持しないというスタンスを取りたがるが、復興期の暫定政権については、話は別である。絶対に地方軍閥の庇護下に入ってはいけないし、中央政権と地方軍閥を同等の政治勢力とみなしてはいけない。(p168)

という具合に指摘します。そしてNGOは「小学校よりも刑務所のほうが大事」ということが理解されなければならない(p.170)という指摘は、それが正しいか否か?という前に、その視点は確かにNGOのなかになかなか生まれにくいのではないか?と自省とともに考えるのです。(これはp.206〜208にもイラク戦争の開戦前の反戦アクションにイギリスで多くの開発援助・人道支援NGOが参加をしていなかったということも合わせて頷けます。僕はこれは福岡でも強く感じました。「戦争利権と化した人道援助」の問題でもあります。)

最後に。伊勢崎さんは自ら「武装解除」の最前線に、国際社会の支援の中行われたミッションの真ん中にいてこう言い切ります。

本来、国際協力の世界では、金を出すものが一番偉いのだ。それも、「お前の戦争に金だけは恵んでやるから、これだけはするな。それが守れない限り金はやらない」という姿勢を貫くとき、金を出すものが一番強いのだ。しかし、日本はこれをやらなかった。「血を流さない」ことの引け目を、ことさら国内だけで喧伝し、自衛隊を派兵する口実に使ってきた。ここに、純粋な国際貢献とは別の政治的意図が見え隠れするのを感じるのだ。右傾化。(p.215。強調は管理人による)

経験を経なければ出てこない言葉かもしれません。またこの言葉の「強さ」にNGOに関わっている人のなかには反感を持つ人もいるかもしれません。しかし、これもまたひとつの現実だろうとも思います。複雑な国際社会のなかで少しでも問題解決にむけ、単に「善意」だけではない関わり方を探りたいとき、この本はひとつの道を示してくれるだろうと思います。

そして、改めてスリランカアチェでは「和平」を以下に進めるか?この混乱・混沌の中で改めて、そこに意識的に、そして逃避ではなく関与していくか?をNGO関係者もまた考える必要があるのだと思います。オススメです。